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「考えさせられる」の作品
読み終えたあと、答えの出ない問いが残る作品。
- 器楽的幻覚仏蘭西から来た若い洋琴家の連続音楽会に、私は六回通う。静かなホテルの会場に、教室のような親しさを覚えていく。
- 野ばら大きな国と小さな国の国境で、老いた兵士と若い兵士が一人ずつ石碑の番をしている。
- 待つ二十の娘が、買い物の帰りに省線の小さい駅に立ち寄る。冷いベンチに坐って改札口を眺め、誰かを待つ。
- 頭ならびに腹真昼に全速力で走る満員の特別急行列車で、一人の子僧が鉢巻をして周りに構わず唄い出す。
- 黄金風景子供のころの私は、のろくさい女中のお慶をいびり続け、肩を蹴って泣かせたこともあった。
- 蜘蛛の糸御釈迦様は極楽の蓮池のふちから、池の下に透けて見える地獄の底をのぞき、大泥坊の犍陀多に目を止める。
- セメント樽の中の手紙木曾川の発電所工事で、松戸与三はミキサーに追われながら一日じゅうセメントの樽を空けている。
- マグノリアの木霧がじめじめ降るなか、諒安は険しい山谷の峯と谷を、沓の底を踏み抜きながらひとりで渡っていく。
- 手袋を買いに雪を初めて見た子狐が、冷たくなった両手を母さん狐に差し出す。母さん狐は町で毛糸の手袋を買ってやろうと考える。
- 闇の絵巻東京を騒がせた強盗が、棒一本あれば闇の中を走れると語った。その記事を読み、私は爽快な戦慄を覚える。
- 普請中雨あがりの夕方、渡辺参事官は改築中で休業同様の精養軒ホテルに入り、二人分の食事の席で人を待つ。
- 桜桃小説家の「私」は、幼い三人の子がいる家で、いつも冗談を言って明るくふるまっている。
- 烏の北斗七星雲の垂れこめた雪の田んぼで、烏の義勇艦隊が年老いた大監督の号令を受けて夕方の演習に飛び立つ。
- 狐憑湖の上に家を建てて暮らす部落で、平凡な男シャクに鷹や狼の霊がのり移ったと評判になる。
- 久助君の話久助君は五年に上がるときにほうびをもらった。父は張り切り、帰ったらすぐ一時間勉強する決まりを作る。
- 虔十公園林縄の帯をしめていつも笑っている虔十は、子供らにばかにされて、笑わないふりをするようになる。
- 蜃気楼秋の昼ごろ、僕は東京から来た大学生のK君と鵠沼の海岸へ蜃気楼を見に出かけ、途中でO君も誘う。
- ツェねずみ古い家の天井裏にすむツェねずみは、いたちに教えられて金米糖を拾いに行くが、蟻の兵隊に追い返される。
- 舞踏会明治十九年十一月三日の夜、十七歳の明子は父親と一緒に、初めての舞踏会が開かれる鹿鳴館の階段を上る。
- よだかの星よだかは顔がまだらで口の裂けたみにくい鳥で、ほかの鳥たちからいつも悪口を言われている。
- 猿ヶ島長い旅に疲れた語り手は、海を越えて霧深い島に着き、岩山の枯れ木に登って枝を折ってしまう。
- 鼻池の尾の禅智内供は、顋の下まで垂れた長い鼻を内心ずっと苦にしている。人前では気にしない顔ですましている。
- 名人伝趙の都の邯鄲に住む紀昌は、天下第一の弓の名人になろうと志し、名手の飛衛に弟子入りする。
- 羅生門平安時代の終わり、荒れはてた京都。主人に暇を出された下人が、羅生門の下で雨がやむのを待っている。
- 寒山拾得唐の官吏の閭丘胤は、台州へ旅立つ前に頭痛に悩み、門に来た乞食坊主に水を吹きかけられて治る。
- どんぐりと山猫ある土曜日の夕方、一郎のうちに山ねこからはがきが届く。めんどうな裁判をするので来てほしいと書いてある。
- 猫の事務所……ある小さな官衙に関する幻想……軽便鉄道の停車場の近くにある猫の第六事務所では、四人の書記が猫の歴史と地理を調べている。
- 文字禍アッシリヤの都ニネヴェの図書館で、毎夜ひそひそと怪しい話し声がするという噂が立つ。
- 興津弥五右衛門の遺書細川家に仕える興津弥五右衛門は、主君の墓前で切腹する前日、子孫のために京都の弟の家で遺書を書く。
- 外科室画家の「予」は、兄弟同然の医学士高峰に無理を言い、貴船伯爵夫人の手術に立ち会う。
- 父帰る明治四十年頃の南海道の小さな町。父が家を出て二十年、母と三人の子はつつましく暮らしている。
- 天災と国防昭和九年、函館の大火と北陸の水害に続いて、九月二十一日に近畿地方を大風水害が襲った。筆者はここから書き起こす。
- なめとこ山の熊なめとこ山の熊捕りの名人の淵沢小十郎は、犬を連れて山を歩き、熊を撃って暮らしている。
- 春の鳥九州の城下町で英語と数学を教える「私」は、城山の頂で、不思議な笑い方をする少年に出会う。
- 手巾法科大学教授の長谷川謹造は、初夏の午後にヴエランダの籐椅子でストリントベルクの作劇術を読んでいる。
- 魔術時雨の晩、私は大森の町はずれに住む印度人のミスラ君を訪ね、魔術を見せてほしいと頼む。
- 枯野抄元禄七年十月、大阪の花屋の裏座敷で、俳諧の大宗匠である芭蕉が門弟たちに囲まれて息を引きとろうとしている。
- 堕落論敗戦から半年がたった。特攻の若者は闇屋になり、未亡人は新たな面影を胸に宿す。私は人間が変ったのではないと見る。
- 日本婦道記梅咲きぬ加賀藩の重職を務める多賀家の嫁加代は、和歌の才を認められ、もうすぐ奥義の允可がさがるところまで来ていた。
- 藪の中山科の藪の中で、旅の侍の死骸が見つかる。検非違使は木樵りや旅法師から順に話を聞いていく。
- 入れ札役人を斬って関所を破った国定忠次と子分たちは、信州へ向かう山中で夜明けに足を止める。
- 牛をつないだ椿の木牛曳きの利助さんは山道の椿の若木に牛をつなぎ、葉を食べさせてしまう。土地の地主にひどく叱られる。
- 高瀬舟江戸時代の京都では、遠島を言い渡された罪人を、高瀬川を下る小舟で大阪へ送った。舟には町奉行所の同心が付き添った。
- 日本婦道記尾花川琵琶湖畔の尾花川に住む太宰の屋敷には志士たちが集い、妻の幸子が心をこめてもてなしてきた。
- 一塊の土足かけ八年寝ていた倅の仁太郎が死に、お住は嫁のお民に壻を取って家に残ってもらおうと考える。
- 最後の一句元文三年の大阪で、船乗り業の桂屋太郎兵衛を斬罪に処すると書いた高札が立てられる。
- 杜子春唐の都洛陽で財産を使い果たした若者杜子春が、寝る所もなく西の門の下で途方に暮れている。
- 忘れえぬ人々三月の初め、雪の残る溝口の宿場で、洋服姿の旅の男が日暮れに旅人宿の亀屋へ泊まる。
- 南京の基督南京の貧しい部屋で、十五歳の宋金花は父を養うために客をとっている。壁には小さな十字架が懸かる。
- 奉教人の死長崎の寺院で育てられた少年ろおれんぞは信心が堅く、いるまんのしめおんに弟のようにかわいがられる。
- 小さき者へ妻を亡くした父が、まだ幼い三人の子どもに向けて、大人になったら読んでほしいと書き残した手紙だ。
- 秋女子大学で才媛と呼ばれた信子は、作家になると誰もが思っていた。従兄の俊吉との結婚も噂されていた。
- 雛御一新の後に家が傾いた紀の国屋は、娘お鶴の見事な雛を、横浜の亜米利加人へ売ることに決める。
- フランドン農学校の豚農学校で飼われる豚は、自分のからだが白金と並べられたのを聞き、その値段を勘定してすっかり幸せになる。
- 安井夫人日向国清武村の儒者の二男、仲平は痘痕と片目で背も低い。郷里では「仲平さんは不男だ」と蔭で言われていた。
- おじいさんのランプかくれんぼで東一君が倉から古いランプを持ち出す。おじいさんは叱ったあと、昔の話を聞かせ始める。
- 千代女十二の時に綴方が雑誌で一等に選ばれた和子が、来年十九になる今、自分は駄目な女だと語り始める。
- 藤十郎の恋元禄の京で、名人坂田藤十郎は近松門左衛門の新作で初めて人妻との密通を演じることになる。
- 或阿呆の一生本屋の梯子の上で世紀末の本を探す二十歳の「彼」から始まり、五十一の短い断章で一人の文学者の生涯をたどる。
- 悟浄歎異沙門悟浄の手記天竺への旅の途中、悟空が八戒に変身の術を教える。俺はそれを見て、思わず吹き出してしまう。
- 畜犬談伊馬鵜平君に与える「私」は犬を猛獣と恐れ、いつか必ず噛まれると信じている。友人が噛まれた話を聞き、憎しみは頂点に達した。
- きりぎりす二十四歳の妻が、五年連れ添った画家の夫へ別れを告げる。全編がその妻の語りかけでできている。
- 十三夜旧暦の十三夜の晩、原田の奥様となった阿関が、車も供もなく一人で実家の格子戸の前に立つ。
- トカトントン青森の海辺の郵便局に勤める二十六歳の青年が、中学の先輩にあたる作家へ長い手紙を書く。
- 駈込み訴え「申し上げます」と旦那さまのもとへ駈け込んだ男が、師である「あの人」を殺してほしいと訴え出る。
- クララの出家千二百十二年の棕櫚の安息日の朝、アッシジの貴族の娘クララは、男たちが現れる不思議な夢から目をさます。
- 不良少年とキリスト歯痛で十日寝こんだ私は、頬に氷をのせて太宰の本を読みかえし、看病する女房に当たり散らす。
- 貝の火子兎のホモイは、流れで溺れかけたひばりの子を助ける。そのあと重い熱病にかかって寝込んでしまう。
- 芋粥摂政藤原基経に仕える五位は、風采が上がらないせいで、同僚からも下役からも軽んじられている。
- 将軍日露戦争の旅順で、白襷隊の兵たちが死地へ向かう。軍司令官のN将軍は兵の手を握り、大元気にやれと励ます。
- 親友交歓昭和二十一年の九月、津軽の生家に避難していた私のもとへ、小学校の同級生だという平田が訪ねてくる。
- 富嶽百景富士は低く俗な山だと思っている「私」が、昭和十三年の初秋に甲州の御坂峠の茶屋へ移り住む。
- 風と光と二十の私と父が死んで借金だけが残り、二十の私は下北沢にある小学校の分校で代用教員になる。
- 武蔵野画や歌でしか知らなかった武蔵野の今を確かめたくなった語り手が、渋谷村で過ごした秋冬の日記を並べる。
- 蘭学事始江戸の長崎屋に通う医師の杉田玄白は、篤学で知られる前野良沢にどうしても親しめずにいる。
- 老妓抄老妓の小そのは財産を築いた晩年、健康で常識的な暮らしを望み、電気の仕掛けや新しい稽古事に親しんでいる。
- 牛肉と馬鈴薯明治のある冬の夜、芝の倶楽部に集まった紳士たちが、酒を飲みながら互いの人生観を語り合っている。
- 舞姫明治の官吏太田豊太郎は、官命でベルリンに留学し、法律を学ぶうちに自分の生き方を疑い始める。
- 堺事件明治元年、堺の取り締まりを任された土佐藩の兵が、上陸したフランス水兵を撃ち、十三人を死なせる。
- 二銭銅貨下駄屋の二階で貧しく暮らす松村武と「私」は、五万円の隠し場所を明かさないまま捕まった紳士泥坊の話をしていた。
- のんきな患者肺を病む吉田は寒に入って高い熱を出し、身動きもできないまま眠れない夜の不安に苦しむ。
- 琥珀のパイプ大震災から間もない渋谷の高台で、役所勤めの私は暴風雨の夜に近所の男たちと夜警の番に立つ。
- 赤ひげ診療譚徒労に賭ける養生所の見習医の保本登は、新出去定の外診の供をして、残暑のきびしい江戸の町を歩く。
- 悟浄出世流沙河の河底に住む妖怪の悟浄は、自分とは何か、魂とは何かを考えずにいられない病にかかっている。
- 赤ひげ診療譚氷の下の芽年の暮れの養生所に、母親に伴われた十九歳の娘おえいが来る。身ごもった子をおろしてもらうためだ。
- ヴィヨンの妻詩人の大谷の妻である「私」は、酒を飲み歩いて帰らない夫を待ち、病弱な坊やと小金井の荒れた家で暮らしている。
- 戯作三昧天保二年の秋、六十を越えた曲亭馬琴は朝湯で愛読者に八犬伝を褒められ、湯船では自作の悪口を聞かされる。
- 赤ひげ診療譚三度目の正直養生所の医師の保本登は、新出去定に命じられて、気が狂ったといわれる大工の猪之を調べにいく。
- 機械九州の造船所を出た語り手の私は、汽車で会った婦人の縁で、ネームプレート製造所に住み込みで働き始める。
- D坂の殺人事件九月初旬の蒸し暑い晩、私はカフェ白梅軒の窓から、向かいの古本屋の様子が妙なことに気づく。
- 日本文化私観日本の古い文化をほとんど知らない僕が、タウトの日本礼讃に異を唱え、自分なりの日本文化論を語りはじめる。
- 恩讐の彼方に旗本の中川三郎兵衛に仕える市九郎は、主人の妾との仲をとがめられて斬り合いになり、主人を殺してしまう。
- 心理試験苦学生の蕗屋清一郎は、同級生の下宿先の老婆が植木鉢の底に大金を隠していると知り、奪う計画を半年かけて練る。
- 白痴戦争末期の東京の場末で、文化映画の演出家見習いの伊沢は、仕立屋の離れの小屋に間借りしている。
- 赤ひげ診療譚おくめ殺し養生所の医者の新出去定と保本登は、帰り道に溝で倒れている血まみれの若者、角三を見つける。
- 忠直卿行状記大坂の陣で一番乗りの手柄を立てた忠直卿は、家康に褒められ、天下第一の誇りを抱いて越前へ帰る。
- 隣の嫁中学を出て百姓を始めたばかりの省作は、稲刈りの疲れで起きられず、母や姉にせかされて朝を迎える。
- 弟子魯の游侠の徒である子路は、評判の学者孔子を辱めようと、雄雞と牡豚を手に乗り込む。
- 歯車知人の結婚披露式へ向かう僕は、レエン・コオトを着た幽霊の噂を聞き、視野に回る半透明の歯車を見る。
- グスコーブドリの伝記イーハトーヴの森に生まれたブドリは、冷害の飢饉で両親を失い、妹のネリも見知らぬ男に連れ去られる。
- 赤ひげ診療譚むじな長屋養生所の見習医の保本登は、嫌っていた医員の上衣を自分から着はじめる。きっかけは病人の一言だった。
- 阿部一族寛永十八年の春、肥後の大名細川忠利が病で亡くなる。許しを得た家臣十八人が、次々に殉死していく。
- 二百十日豆腐屋の伜の圭さんと友人の碌さんが、阿蘇のふもとの温泉宿に泊まり、のんきな会話を重ねる。
- 陰翳礼讃自分で家を建てた筆者は、電燈や煖房や便器を日本座敷になじませようと、あれこれ苦心する。
- 女生徒五月の最初の朝、眼鏡をかけた女学生の「私」が目をさまし、亡き父を思いながら犬と遊んで家を出る。
- カインの末裔北海道の晩秋、広岡仁右衛門は痩せた馬を引き、妻と赤坊を連れて松川農場の小作人になる。
- 世相敗戦の年の師走、小説家の私は昔の千日前の事件を書きかけたまま、筆が少しも進まずにいる。
- 李陵漢の武帝の時代、騎都尉の李陵は騎兵を持たない歩兵五千を率いて、匈奴の地へ深く攻め入る。
- 侏儒の言葉道徳や恋愛、芸術や政治を題に短い断章を次々と並べた、芥川龍之介の箴言集である。
- 環礁ミクロネシヤ巡島記抄南洋の役所に勤める「私」が、ミクロネシアの島々を船で巡り、見聞きしたことを章ごとに書きとめていく。
- 桜島終戦間近の夏、暗号員の村上兵曹は坊津から桜島への転勤を命じられ、途中の町で右の耳が無い妓と一夜を過ごす。
- 女の決闘太宰治が森鴎外訳の短篇『女の決闘』を読者と一緒に読み、原作の合間に自分の筆を差し込んでいく。
- 河童精神病院の患者である第二十三号が、だれにでも語る話だ。三年前の夏、穂高山へ登る途中で河童に出会う。
- 銀河鉄道の夜病気の母と暮らすジョバンニは、学校の後に活版所で働き、級友たちにからかわれている。
- 日の果てルソン島のサンホセ盆地に潜む部隊で、宇治中尉は隊長から軍医の花田中尉を射殺せよと命じられる。
- 蒲団妻と三人の子がある作家の竹中時雄のもとへ、文学を志す女学生の横山芳子が弟子入りしてくる。
- 大塩平八郎天保八年二月、飢饉の続く大阪で二人の少年が西町奉行所の門を敲き、陰謀を告げる訴状を差し出す。
- 一九二八年三月十五日小樽で労働運動に加わる夫の龍吉を、妻のお惠は誇りと不安の入りまじった気持ちで見守っている。
- 生まれいずる悩み北海道の農場で筆が進まない私は、十年前に絵を見せに来た少年のことを思い出す。
- 硝子戸の中風邪で書斎にこもる作家が、硝子戸の中で見聞きした小さな出来事を新聞に書きつづっていく。
- 風立ちぬ夏の高原で絵を描く節子のそばで、私は不意に立った風の中で一つの詩句を口ずさむ。
- 五重塔谷中感応寺に五重塔が建つと聞き、腕はあるが世渡りの下手な大工の十兵衛が、自分に建てさせてほしいと願い出る。
- 思い出す事など胃の病で入院していた余は、転地先の修善寺で病を再発させ、寝たまま東京の病院へ戻ってくる。
- 濹東綺譚小説『失踪』の舞台を探す老作家のわたくしは、六月末の夕方に玉の井の盛り場へ足を向ける。
- ヰタ・セクスアリス哲学者の金井湛は自然派の小説を読むうちに、自分だけが性欲に冷淡なのではないかと疑い始める。
- 蟹工船函館を出た蟹工船博光丸に、貧しい村や町から集められた漁夫と十四、五の雑夫が乗り込む。
- 党生活者軍需品を作る倉田工業に臨時工として入り込んだ私は、警察に追われながら非合法の党活動を続けている。
- 陰獣探偵小説家の「私」は上野の博物館で小山田静子と出会い、作家と愛読者として手紙を交わす仲になる。
- 幻化精神科病院を抜け出した久住五郎は、鹿児島へ向かう飛行機で丹尾という男と隣り合わせる。
- お伽草紙空襲の夜、防空壕で子に絵本を読む父が、昔話とは別の物語を胸の中で組み立てはじめる。
- 人間失格人間の生活というものが見当つかない葉蔵は、幼い頃から道化を演じて周りを笑わせ、本心を隠して生きてきた。
- 墨汁一滴病で筆を持つのも苦しくなった正岡子規が、十行でも一行でもよいから毎日書こうと思い立つ。
- 草枕語り手の画工は、人の世の煩いを離れて物を画として見る非人情の旅を思い立ち、春の山路を那古井の温泉場へ向かう。
- 病牀六尺六尺の寝床から動けなくなった正岡子規が、新聞に毎日短い文章を寄せていく随筆である。
- 菜穂子母の三村夫人は、作家の森於菟彦と出会ってからの日々を、娘の菜穂子に宛てた日記に綴る。
- 惜別東北の村で開業する老医師が、仙台医専の同級生だった周樹人と恩師藤野先生の思い出を手記に書く。
- 新ハムレット先王が急死して二箇月、叔父クローヂヤスが王位を継いで王妃と結婚する。王子ハムレットは喪服のまま式に出る。
- 正義と微笑十六歳の芹川進は兄にマタイ伝を読んでもらい、微笑して正義を行うと心に決めて日記をつけ始める。
- 蓼喰う虫要と美佐子の夫婦は互いに愛し合えず、夫も認めたうえで妻は阿曽と会い続けている。
- 右大臣実朝実朝の死から二十年後、近習だった語り手が山奥で、仕えた将軍家の日々を問われるままに語り出す。
- 山の人生柳田國男が、山に入ったまま帰らなかった人々の記録と伝承を集め、そのわけを考えた研究である。
- 青年Y県から上京した小泉純一は、小説家を志して大石路花を訪ね、谷中の初音町に小さな家を借りる。
- 門役所に勤める宗助は、崖下の借家で妻の御米と静かに暮らしている。子はなく、二人は過去をあまり語らない。
- 坑夫二人の少女との関係に行き詰まって家を出た十九歳の青年が、松原の茶店で長蔵という男に呼び止められる。
- 道草外国から帰り駒込に世帯を持った健三は、雨の日の道で、縁を切ったはずの昔の養父の島田に出会う。
- こころ鎌倉の海で知り合った先生に惹かれ、学生の私は東京の家へ通う。先生は毎月、友の墓に一人で参っている。
- 渋江抽斎語り手のわたくしは古い武鑑を集めるうち、弘前の医官渋江氏の蔵書印がある本に何度も出会う。
- 三四郎熊本の高等学校を卒業した小川三四郎は、大学に入るため汽車で上京する。車中で同じ宿に泊まる女や髭の男と出会う。
- それから三十になっても職に就かない長井代助は、父の金で読書と音楽に暮らしている。そこへ旧友の平岡が東京へ戻ってくる。
- 痴人の愛電気会社の技師の河合譲治は、浅草のカフエエで働く十五歳のナオミを引き取り、理想の妻に育てようとする。
- 彼岸過迄大学を出たが職の見つからない田川敬太郎は、平凡を嫌い、世の中の不思議な事件に出会いたいと願っている。
- 破戒信州飯山の小学校で教える瀬川丑松は、被差別部落の出身であることを隠せという父の戒めを守って暮らしている。
- さぶ栄二とさぶは小舟町の表具屋芳古堂で育った職人仲間で、ぐずと言われるさぶは栄二を頼りにしている。
- 行人二郎は友人の三沢と大阪で会う約束をするが、三沢は胃を病んで入院し、同じ病院の芸者を気にかける。
- 浮雲敗戦後の冬、幸田ゆき子は仏印から敦賀へ引き揚げる。ダラットで愛しあった富岡に会うため、東京へ向かう。
- 金色夜叉明治の東京で、孤児の間貫一は恩人の鴫沢家に養われ、一人娘の宮と夫婦になる約束をしていた。
- 吾輩は猫である名前のない猫が英語教師の苦沙弥の家に住みつき、主人や家族、訪ねてくる友人たちを猫の目で眺める。