とししゅん
杜子春
- 読了時間
- 約19分
- 文字数
- 9,078字
- 読みやすさ
- やさしい
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「赤い鳥」1920(大正9)年7月号
三行でいうと
- 唐の都洛陽で財産を使い果たした若者杜子春が、寝る所もなく西の門の下で途方に暮れている。
- 片目の老人の教えで黄金を掘り当て大金持ちになるが、贅沢の末にまた一文無しに戻ることを繰り返す。
- 人間に愛想が尽きた杜子春は仙人の弟子を志し、峨眉山で何があっても声を出すなと命じられる。
登場人物
- 杜子春
- 元は金持の息子で、財産を使い果たして洛陽の西の門の下に立つ若者。
- 鉄冠子
- 峨眉山に棲む仙人で、片目の老人の姿で杜子春の前に現れる。
- 神将
- 峨眉山を住居とすると名乗り、三叉の戟を手に杜子春へ返答を迫る。
- 閻魔大王
- 地獄の森羅殿で、峨眉山の上にいた訳を杜子春に問いただす王。
読みどころ
杜子春は二度大金持ちになり、二度とも一文無しに戻る。金のあるうちだけ集まる友だちを見て、杜子春は「人間というものに愛想がつきたのです」と言う。金で人の心は動くのか、人は何を頼りに生きればよいのか。この話は、その問いを仙人の課す試練の形で描く。
老人は三度とも「お前は何を考えているのだ」と声をかけ、掘る場所は影の頭から胸、腹へと下がっていく。この繰り返しに注目して読むと、杜子春の変化が見えてくる。語り手は「です・ます」で読者に語りかけ、贅沢の数々を「いつになってもこの話がおしまいにならない位」と切り上げる。峨眉山に入ると、虎や雷や神将が次々に現れ、話の運びが一気に速くなる。
芥川龍之介が、唐の伝奇『杜子春伝』をもとに書いた童話だ。1920年に児童雑誌『赤い鳥』に発表された。文は短く、子どもでも読める。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
峨眉山の一枚岩の上で、杜子春は虎や白蛇や大あらしに襲われても黙り通す。神将の戟に突き殺されると、魂は地獄の森羅殿へ下りていく。閻魔大王の問いにも答えず、鬼どもに剣の山や焦熱地獄で責められても口を利かない。
閻魔大王は、畜生道に落ちた杜子春の父母を引き立てさせる。二匹の痩せ馬の顔は、死んだ父母の通りだった。鬼どもが鉄の鞭で馬を打ちのめすなか、杜子春の耳にかすかな母親の声が届く。母親は「心配をおしでない」と息子を気づかい、黙っていてよいと告げる。杜子春は戒めを忘れて馬の頸を抱き、「お母さん」と叫ぶ。
気がつくと、杜子春は夕日を浴びて洛陽の西の門の下に立っていた。仙人になれなかったことをかえって嬉しく思うと、杜子春は老人に話す。鉄冠子は、もし黙っていたら命を絶つつもりだったと明かす。杜子春は、何になっても「人間らしい、正直な暮し」をするつもりだと答える。鉄冠子は二度と会わないと告げ、泰山の南の麓にある家を畑ごと杜子春に与える。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日