まつりのばん
祭の晩
- 読了時間
- 約8分
- 文字数
- 3,822字
- 読みやすさ
- やさしい
- 表記
- 新字新仮名
三行でいうと
- 山の神の秋祭りの晩、亮二は十五銭をもらってお旅屋へ出かけ、見世物小屋の「空気獣」に入ってしまう。
- 小屋で亮二は、黄金いろの丸い眼をした大きな男にぶつかる。男は十銭の銀貨を払い、人ごみに消えた。
- 掛茶屋で、その男が団子の代金を払えずに村の若者に責められている。亮二は残った白銅を握って近づく。
登場人物
- 亮二
- 新しい水色のしごきをしめ、十五銭をもらって祭に出かける子ども。
- 達二
- 亮二の従兄で、空気獣は牛の胃袋に空気をつめたものだと亮二に教える。
- 山男
- 簑のようなものを着た大きな男で、顔は骨ばって赤く、眼は煤けたような黄金いろをしている。
- お爺さん
- 亮二の家でいろりに火を焚いて枝豆をゆでており、霧の深い時に山で何度も山男に会ったことがある。
- 掛茶屋の主人
- 耳が少し悪く、男の言葉を聞き違えて大声でどなる。
読みどころ
祭の夜に、一人の子どもがよそから来た男を助ける話である。亮二は泣いている男を見て、悪い人ではないと考える。最後の一枚の白銅を差し出すその判断が話の芯にある。正直な者に正直で返すとはどういうことか、静かに問いかけてくる。
読むときは祭の夜の描き方に目を向けたい。空気獣は棒でつつくたびにふくれる。屋台の苹果はアセチレンのあかりで光る。掛茶屋では、どもる男の言葉を耳の悪い主人が聞き違え、話がかみ合わない。亮二が心の中で考えたことは丸括弧で書かれ、子どもの目で騒ぎを見ていることがよく分かる。
宮沢賢治は、山男を『山男の四月』などほかの童話にも登場させている。この作品の山男は、人の世の決まりにうまくなじめない存在として描かれる。祭のにぎわいと、帰り道の暗い田圃や星との対比も、賢治らしい読みどころである。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
亮二は、しゃがんで男の足の上に白銅をだまって置く。男はそれを主人の前の台に置き、薪を百把、栗を八斗あとで返すと叫ぶ。そして若者たちをつき退けて、風のように逃げ出す。みんなは「山男だ、山男だ」と叫ぶが、姿はもう見えない。風が吹いてあかりが消え、亮二はかぐらを見ずに家へ急ぐ。
家でお爺さんに話すと、お爺さんは笑って「山男というものは、ごく正直なもんだ」と言う。そのとき表で大きな音がして家がゆれる。外に出ると、家の前に太い薪が山のように投げ出されていた。あたりいちめんには栗の実も散らばっている。お爺さんは、こんなに貰うわけにはいかないと言い、着物や夜具や団子を山へ持って行こうと話す。
亮二は山男がかわいそうで、泣きたいような気持ちになる。山男が嬉しがって天に飛んでしまうくらい、いいものをやりたいと叫ぶ。お爺さんは、そういういいものがあればと言って家に入る。亮二はだまって月をながめ、山の方では風が鳴っている。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日