やまなし
やまなし
- 読了時間
- 約6分
- 文字数
- 2,592字
- 読みやすさ
- やさしい
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「岩手毎日新聞」岩手毎日新聞社、1923(大正12年)4月8日
三行でいうと
- 小さな谷川の底を写した二枚の幻燈の話だ。五月の水の底で、蟹の兄弟がクラムボンのことを話している。
- 兄弟の頭の上を、魚が行ったり来たりする。そこへ青く光るものが飛び込み、魚の姿は見えなくなる。
- 十二月の月夜、大きくなった兄弟は泡の大きさを比べている。そこへ天井から黒く円いものが落ちてくる。
登場人物
- 兄さんの蟹
- 蟹の兄弟の兄で、青いものの先が黒く尖っているのをはっきり見る。
- 弟の蟹
- 蟹の兄弟の弟で、泡くらべで自分の泡の方が大きいと言い張る。
- お父さんの蟹
- 子供らのところへ出て来て、かわせみややまなしのことを教える。
- クラムボン
- 蟹の兄弟の話に出てくるもので、何なのかは本文に書かれていない。
読みどころ
この作品は、五月と十二月の二枚の幻燈を並べている。どちらの季節にも、水の天井から何かが飛び込んでくる。それが蟹の親子に何をもたらすかが、二つの場面でまるで違う。クラムボンが何なのかは、最後まで説明されない。
読むときは、水の底から上を見上げる目の位置に注目したい。水面は天井と呼ばれ、日の光は網になって底の磐の上でゆれる。「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」のように、兄弟の言葉は短く、同じ言い方を何度もくり返す。十二月の泡くらべの会話は、兄と弟のやりとりとして読める。
宮沢賢治の短い童話で、1923年に岩手毎日新聞に載った。小学校の国語の教科書にも長く載ってきた作品だ。かぷかぷ、トブンといった音の言葉が多く、声に出して読んでも楽しめる。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
五月の場面では、青いものが飛び込んだあと、兄弟は声も出せずに居すくまる。出て来たお父さんの蟹は、それはかわせみという鳥で、自分たちはかまわないと言う。魚はどこへ行ったのかと聞かれると、こわい所へ行ったと答える。こわがる兄弟に、お父さんは流れて来た白い樺の花びらを見せる。
十二月の場面では、落ちてきた黒く円いものを、兄弟はかわせみだと思って首をすくめる。お父さんはよく見てから、それはやまなしだと言う。親子三疋はいい匂いを追って流れについて行き、やまなしは木の枝にひっかかって止まる。
お父さんは、もう二日ばかり待てばやまなしは沈んできて、ひとりでにおいしいお酒ができると話す。親子は自分たちの穴へ帰り、波は青じろい焔をあげ続ける。最後に語り手が、幻燈はこれでおしまいだと告げる。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日