すいせんづきのよっか
水仙月の四日
- 読了時間
- 約12分
- 文字数
- 5,645字
- 読みやすさ
- ふつう
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社、1924(大正13)年12月1日
三行でいうと
- 雪婆んごが遠くへ出かけた晴れた日、赤い毛布の子供がカリメラのことを考えながら家へ急いでいる。
- 雪童子は丘の上からやどりぎの枝を子供に投げるが、やがて西北から風が吹き、空が暗くなっていく。
- 雪婆んごが戻って吹雪が始まり、雪童子は風の中で泣いている子供の声を聞いてそちらへ走る。
登場人物
- 雪童子
- 白熊の毛皮の三角帽子をかぶり、二疋の雪狼を連れて革むちで雪を降らせる。
- 雪婆んご
- 猫のような耳と灰いろの髪をもち、雪童子たちに休まず雪を降らせるよう命じる。
- 子供
- 赤い毛布にくるまり、カリメラを作ることを考えながら山のうちへ急ぐ。
- 雪狼
- 人の眼には見えない狼で、風に狂い出すと雪雲をふんで空をかけまわる。
読みどころ
この話では、吹雪を降らせる側から吹雪が描かれる。雪童子は雪婆んごに命じられて雪を降らせながら、道に迷った人間の子供に出会う。命令に従うふりをしながら、その子をどう扱うのか。雪童子の振る舞いの意味は、最後まで読むと分かる。
雪童子が子供にかける言葉は、子供の耳には風の音にしか聞こえない。この行き違いを頭に置いて吹雪の場面を読むと、乱暴に見える行動の受け取り方が変わる。冒頭の晴れた雪原と夜明けの空には、群青、桃いろ、琥珀いろと色の言葉が重ねられている。雪童子が星に呼びかける歌や、雪婆んごの「ひゅう」とくり返す声にも耳を傾けたい。
宮沢賢治が生前に出した童話集『注文の多い料理店』に収められた一編である。雪や風を、人の眼に見えない者たちの仕事として描いたところに、賢治らしい自然の見方が表れている。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
雪童子は峠で倒れた子供に、毛布をかぶってうつむけに倒れているよう何度も叫ぶ。だが子供にはただの風の声にしか聞こえず、起きあがろうともがき続ける。雪童子はわざとひどくつきあたって子供を倒す。そこへ来た雪婆んごが子供を取ってしまえと言うと、雪童子は調子を合わせて答えながら、動いてはいけないとそっと言い続ける。力のつきた子供に、雪童子は赤い毛布をすっかりかけ、上から雪をたくさんかぶせる。そして「あのこどもは、ぼくのやったやどりぎをもっていた。」とつぶやき、泣くような顔をする。
雪は夜じゅう降り続き、夜明けが近づくと雪婆んごは海の方へ去っていく。雪童子たちは初めて挨拶を交わす。子供が一人死んだと言う仲間に、雪童子は眠っているだけだと答え、その場所にしるしをつけておくと言う。三人の雪童子は九疋の雪狼を連れて西へ帰る。
朝日が昇ると、雪童子は雪狼に子供の埋まった場所の雪を散らさせる。村の方からは、かんじきをはいて毛皮を着た人が急いでやって来る。赤い毛布の端が雪から出ると、雪童子は丘にかけあがって「お父さんが来たよ。もう眼をおさまし。」と叫ぶ。子供はかすかに動いたように見え、毛皮の人は一生けん命に走ってくる。
読んでみる
青空文庫で無料で読む図書カード:水仙月の四日本で読む
注や解説の付いた文庫は、言葉の意味や時代背景を確かめながら読めます。
次に読むなら
公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日