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「生と死」の作品
人の死や、生きることの意味に向き合う作品。
- 金の輪長い病気からようやく床を離れた太郎は、三月の末に外へ出る。だが往来には遊ぶ友だちがだれもいない。
- 桜の樹の下には語り手の俺は、満開の桜の美しさがどうしても信じられず、この二三日は不安で憂鬱だった。
- 野ばら大きな国と小さな国の国境で、老いた兵士と若い兵士が一人ずつ石碑の番をしている。
- セメント樽の中の手紙木曾川の発電所工事で、松戸与三はミキサーに追われながら一日じゅうセメントの樽を空けている。
- やまなし小さな谷川の底を写した二枚の幻燈の話だ。五月の水の底で、蟹の兄弟がクラムボンのことを話している。
- 蠅真夏の宿場で、蜘蛛の巣から落ちた一疋の蠅が馬の背に這い上る。馭者は饅頭屋の店頭で将棋を指している。
- 白昼夢晩春の蒸し暑い午後、私は場末の埃っぽい大通りを、用事か散歩かも思い出せぬまま歩いていた。
- 木乃伊波斯王カンビュセスが埃及に攻め入った軍に、都の風になじまない陰鬱な部将パリスカスがいた。
- 牛女ある村に、体が大きく口のきけない女がいた。やさしい女で、一人の男の子を大事に育て、村の人から「牛女」と呼ばれた。
- 烏の北斗七星雲の垂れこめた雪の田んぼで、烏の義勇艦隊が年老いた大監督の号令を受けて夕方の演習に飛び立つ。
- 狐憑湖の上に家を建てて暮らす部落で、平凡な男シャクに鷹や狼の霊がのり移ったと評判になる。
- 牛人魯の叔孫豹は亡命の途中で一夜の契りを結び、のちに黒い牛のような男に救われる夢を見る。
- 蜃気楼秋の昼ごろ、僕は東京から来た大学生のK君と鵠沼の海岸へ蜃気楼を見に出かけ、途中でO君も誘う。
- 魚服記本州の北端にある馬禿山の滝のそばで、スワは父親と炭焼小屋に暮らしながら茶店の番をしている。
- 舞踏会明治十九年十一月三日の夜、十七歳の明子は父親と一緒に、初めての舞踏会が開かれる鹿鳴館の階段を上る。
- よだかの星よだかは顔がまだらで口の裂けたみにくい鳥で、ほかの鳥たちからいつも悪口を言われている。
- Kの昇天或はKの溺死療養地のN海岸で知り合ったK君が溺死した。私は、その死に思い悩む相手へ長い手紙を書く。
- 交尾病気で夜中に眼が冴える私は、寝静まった町の物干し場に出て、露路を行き交う猫を眺めている。
- 水仙月の四日雪婆んごが遠くへ出かけた晴れた日、赤い毛布の子供がカリメラのことを考えながら家へ急いでいる。
- 六の宮の姫君昔気質の父母に大切に育てられた姫君は、両親を相次いで亡くし、乳母だけを頼りに古い屋形で暮らしていく。
- 葉桜と魔笛葉桜のころになると、老夫人は三十五年前に島根の城下まちで過ごした春を思い出す。
- 興津弥五右衛門の遺書細川家に仕える興津弥五右衛門は、主君の墓前で切腹する前日、子孫のために京都の弟の家で遺書を書く。
- 外科室画家の「予」は、兄弟同然の医学士高峰に無理を言い、貴船伯爵夫人の手術に立ち会う。
- なめとこ山の熊なめとこ山の熊捕りの名人の淵沢小十郎は、犬を連れて山を歩き、熊を撃って暮らしている。
- 春の鳥九州の城下町で英語と数学を教える「私」は、城山の頂で、不思議な笑い方をする少年に出会う。
- 眉山戦後の新宿で、小説家の僕たちは飲み屋の若松屋に通い、女中のトシちゃんを陰で眉山と呼んでいた。
- 枯野抄元禄七年十月、大阪の花屋の裏座敷で、俳諧の大宗匠である芭蕉が門弟たちに囲まれて息を引きとろうとしている。
- 堕落論敗戦から半年がたった。特攻の若者は闇屋になり、未亡人は新たな面影を胸に宿す。私は人間が変ったのではないと見る。
- 母子像厚木の基地に近い警察署に、中学一年の太郎の担任が呼び出される。太郎は火いじりの件で黙りこんでいる。
- 藪の中山科の藪の中で、旅の侍の死骸が見つかる。検非違使は木樵りや旅法師から順に話を聞いていく。
- 高瀬舟江戸時代の京都では、遠島を言い渡された罪人を、高瀬川を下る小舟で大阪へ送った。舟には町奉行所の同心が付き添った。
- 一塊の土足かけ八年寝ていた倅の仁太郎が死に、お住は嫁のお民に壻を取って家に残ってもらおうと考える。
- 家霊坂道の途中にある老舗のどじょう店「いのち」。家業を嫌って家を出たくめ子は、母の病で呼び戻されて帳場に坐る。
- 土神ときつね一本木の野原の北に立つ樺の木には、谷地に住む乱暴な土神と、上品な狐の二人の友達がいた。
- 魚玄機唐の都長安で、詩と美貌で名高い女道士の魚玄機が、人を殺して獄に下ったと噂が広まる。
- 春は馬車に乗って海辺の家で、胸の病気で寝ついた妻を彼が看病している。妻は寝台から庭の松の葉が光るのを眺めている。
- 奉教人の死長崎の寺院で育てられた少年ろおれんぞは信心が堅く、いるまんのしめおんに弟のようにかわいがられる。
- 小さき者へ妻を亡くした父が、まだ幼い三人の子どもに向けて、大人になったら読んでほしいと書き残した手紙だ。
- 日本婦道記松の花紀州徳川家の年寄役、佐野藤右衛門は烈女節婦の伝記『松の花』を校閲している。その朝、病床の妻やすが息をひきとる。
- 文鳥早稲田に移った自分は、三重吉に勧められて文鳥を飼うことにする。金を渡したが、鳥と籠はなかなか届かない。
- 一兵卒満洲の野で、脚気を患う一兵卒が軍医に止められながら病院を出て、隊を追って一人で歩き出す。
- 冬の日冬至の近いころ、肺を病む堯は間借りの二階から、葉を落とす木々と早く消える冬の日を毎日眺めている。
- フランドン農学校の豚農学校で飼われる豚は、自分のからだが白金と並べられたのを聞き、その値段を勘定してすっかり幸せになる。
- 或阿呆の一生本屋の梯子の上で世紀末の本を探す二十歳の「彼」から始まり、五十一の短い断章で一人の文学者の生涯をたどる。
- 競馬元中学教師の寺田は、淀の競馬場で朝から1番の馬ばかり買い続けている。亡くなった妻の名が一代だったからだ。
- 玄鶴山房ゴム印の特許で資産を作った堀越玄鶴は肺結核を患い、娘夫婦と寝たきりの妻のいる家の離れで床に就いている。
- 竹の木戸東京郊外に住む会社員の大庭真蔵の家は、井戸のない隣の植木屋夫婦に水を汲ませてやっている。
- 修禅寺物語伊豆の修禅寺村に住む面作師の夜叉王は、将軍頼家に似せた面を半年たっても納めずにいる。
- 不良少年とキリスト歯痛で十日寝こんだ私は、頬に氷をのせて太宰の本を読みかえし、看病する女房に当たり散らす。
- 将軍日露戦争の旅順で、白襷隊の兵たちが死地へ向かう。軍司令官のN将軍は兵の手を握り、大元気にやれと励ます。
- 牛肉と馬鈴薯明治のある冬の夜、芝の倶楽部に集まった紳士たちが、酒を飲みながら互いの人生観を語り合っている。
- 聖家族九鬼の告別式の日、気分を悪くした細木夫人を一人の青年が助ける。九鬼にかわいがられていた河野扁理だった。
- 倫敦塔留学して間もない余は、ロンドンの人波と騒音におびえながら、地図一枚を頼りに倫敦塔へ向かう。
- 堺事件明治元年、堺の取り締まりを任された土佐藩の兵が、上陸したフランス水兵を撃ち、十三人を死なせる。
- のんきな患者肺を病む吉田は寒に入って高い熱を出し、身動きもできないまま眠れない夜の不安に苦しむ。
- ひかりの素足山小屋で父と夜を明かした一郎と弟の楢夫。朝になって、楢夫は風の又三郎に言われたことがこわいと泣き出す。
- 人でなしの恋十九で旧家の門野家に嫁いだ京子は、女ぎらいと噂された美男子の夫に思いがけず深く愛される。
- 城のある町にて幼い妹を亡くした峻は、その死を落ちついて考えたくて、城跡のある町の姉の家へやって来る。
- 死後の恋浦塩の町で評判の風来坊の男が日本の軍人をレストランに誘い、自分の話を聞いてほしいと頼む。
- とむらい機関車汽車で乗り合わせた大学生に、H駅の機関庫に勤めていた男が「葬式機関車」の話を語りはじめる。
- にごりえ新開の町の店「菊の井」で一番の売れっ子のお力は、我ままに振る舞いながら客を呼び込む。
- 東京八景(苦難の或人に贈る)昭和十五年の夏、三十二歳の私は伊豆の山村の安宿にこもる。十年間の東京生活を書こうと地図を広げる。
- ダス・ゲマイネ恋に破れた二十五歳の大学生の「私」は、上野の甘酒屋で、音楽学校に八年いるという奇妙な男の馬場と知り合う。
- 赤ひげ診療譚駈込み訴え小石川養生所の見習医保本登は、赤髯こと新出去定の助手として死にゆく老人と重傷の女人夫に立ち会う。
- 機械九州の造船所を出た語り手の私は、汽車で会った婦人の縁で、ネームプレート製造所に住み込みで働き始める。
- 赤ひげ診療譚鶯ばか保本登は去定の供で伊豆さま裏の長屋を訪ね、目笊に千両の鶯がいると言い張る十兵衛を診る。
- 白痴戦争末期の東京の場末で、文化映画の演出家見習いの伊沢は、仕立屋の離れの小屋に間借りしている。
- 湖畔旧大名家の奥平が、二歳にならない息子に宛てて、妻を手にかけた事情と失踪の理由を書き残す。
- 弟子魯の游侠の徒である子路は、評判の学者孔子を辱めようと、雄雞と牡豚を手に乗り込む。
- 歯車知人の結婚披露式へ向かう僕は、レエン・コオトを着た幽霊の噂を聞き、視野に回る半透明の歯車を見る。
- グスコーブドリの伝記イーハトーヴの森に生まれたブドリは、冷害の飢饉で両親を失い、妹のネリも見知らぬ男に連れ去られる。
- 赤ひげ診療譚むじな長屋養生所の見習医の保本登は、嫌っていた医員の上衣を自分から着はじめる。きっかけは病人の一言だった。
- 阿部一族寛永十八年の春、肥後の大名細川忠利が病で亡くなる。許しを得た家臣十八人が、次々に殉死していく。
- 夜叉ヶ池越前の山奥の琴弾谷で、鐘楼守の萩原晃は妻の百合と暮らし、一日に三度の鐘を撞いている。
- 夜長姫と耳男ヒダの若いタクミの耳男は、親方の身代りとして夜長の長者の邸へ行き、姫の持仏を彫る腕くらべに加わる。
- ハムレット敗戦の翌年の夏、高原の避暑地で古風な装いの白髪の老人が噂になる。連れの青年祖父江がその素性を語りだす。
- カインの末裔北海道の晩秋、広岡仁右衛門は痩せた馬を引き、妻と赤坊を連れて松川農場の小作人になる。
- 野菊の墓矢切村の旧家で暮らす十五歳の政夫と、母の看病に来た従妹の民子は、何より仲の好い二人だった。
- 侏儒の言葉道徳や恋愛、芸術や政治を題に短い断章を次々と並べた、芥川龍之介の箴言集である。
- 桜島終戦間近の夏、暗号員の村上兵曹は坊津から桜島への転勤を命じられ、途中の町で右の耳が無い妓と一夜を過ごす。
- 女の決闘太宰治が森鴎外訳の短篇『女の決闘』を読者と一緒に読み、原作の合間に自分の筆を差し込んでいく。
- 河童精神病院の患者である第二十三号が、だれにでも語る話だ。三年前の夏、穂高山へ登る途中で河童に出会う。
- 遠野物語柳田國男が遠野の人佐々木鏡石から聞いた話を、一字一句加減せずに書き留めた百十九の話である。
- 銀河鉄道の夜病気の母と暮らすジョバンニは、学校の後に活版所で働き、級友たちにからかわれている。
- 性に眼覚める頃十七歳の私は学校をやめ、茶を好む老いた父と犀川のほとりの寺で暮らしながら詩を書いている。
- 日の果てルソン島のサンホセ盆地に潜む部隊で、宇治中尉は隊長から軍医の花田中尉を射殺せよと命じられる。
- 或る少女の死まで駒込に下宿する若い詩人の私は、根津の酒場で起きた喧嘩に加わり、翌朝に刑事が来て警察署へ連れて行かれる。
- 大塩平八郎天保八年二月、飢饉の続く大阪で二人の少年が西町奉行所の門を敲き、陰謀を告げる訴状を差し出す。
- 生まれいずる悩み北海道の農場で筆が進まない私は、十年前に絵を見せに来た少年のことを思い出す。
- 硝子戸の中風邪で書斎にこもる作家が、硝子戸の中で見聞きした小さな出来事を新聞に書きつづっていく。
- 風立ちぬ夏の高原で絵を描く節子のそばで、私は不意に立った風の中で一つの詩句を口ずさむ。
- 思い出す事など胃の病で入院していた余は、転地先の修善寺で病を再発させ、寝たまま東京の病院へ戻ってくる。
- 押絵の奇蹟病床のピアノ教師トシ子が、名女形の菱田新太郎へ長い手紙を書く。二人は同じ病で血を吐いていた。
- 蟹工船函館を出た蟹工船博光丸に、貧しい村や町から集められた漁夫と十四、五の雑夫が乗り込む。
- 幻化精神科病院を抜け出した久住五郎は、鹿児島へ向かう飛行機で丹尾という男と隣り合わせる。
- 人間失格人間の生活というものが見当つかない葉蔵は、幼い頃から道化を演じて周りを笑わせ、本心を隠して生きてきた。
- 墨汁一滴病で筆を持つのも苦しくなった正岡子規が、十行でも一行でもよいから毎日書こうと思い立つ。
- 千曲川のスケッチ島崎藤村が信州小諸で教師をした七年の暮らしを、年下の友人に語りかける形で綴った写生文集だ。
- パンドラの匣終戦の日に喀血を打ち明けた二十歳の小柴利助は、結核療養所「健康道場」に入り、親友へ手紙を書き始める。
- 病牀六尺六尺の寝床から動けなくなった正岡子規が、新聞に毎日短い文章を寄せていく随筆である。
- 菜穂子母の三村夫人は、作家の森於菟彦と出会ってからの日々を、娘の菜穂子に宛てた日記に綴る。
- 斜陽敗戦の年の冬、かず子は母と二人で東京の家を手放し、伊豆の山荘に移ってひっそりと暮らしはじめる。
- 柳橋物語研屋の祖父と暮らすおせんは、上方へ発つ大工の庄吉から、帰るまで待っていてくれと頼まれる。
- 右大臣実朝実朝の死から二十年後、近習だった語り手が山奥で、仕えた将軍家の日々を問われるままに語り出す。
- 卍弁護士の妻の柿内園子が、ある作家に向けて自分の身に起きた事件を大阪の言葉で語り出す。
- 門役所に勤める宗助は、崖下の借家で妻の御米と静かに暮らしている。子はなく、二人は過去をあまり語らない。
- 坑夫二人の少女との関係に行き詰まって家を出た十九歳の青年が、松原の茶店で長蔵という男に呼び止められる。
- 田舎教師中学を出た林清三は、家が貧しく進学をあきらめ、弥勒の村の小学校に教員として赴任する。
- こころ鎌倉の海で知り合った先生に惹かれ、学生の私は東京の家へ通う。先生は毎月、友の墓に一人で参っている。
- 渋江抽斎語り手のわたくしは古い武鑑を集めるうち、弘前の医官渋江氏の蔵書印がある本に何度も出会う。
- 彼岸過迄大学を出たが職の見つからない田川敬太郎は、平凡を嫌い、世の中の不思議な事件に出会いたいと願っている。
- 虞美人草哲学好きの甲野さんと快活な宗近君が春の京都を旅する。東京では甲野さんの異母妹の藤尾が、詩人肌の小野を思うままに操っている。
- 季節のない街目に見えない市電を毎日運転する六ちゃんが、どぶ川を越えて貧しい長屋の街へ猫を送り届ける。
- 浮雲敗戦後の冬、幸田ゆき子は仏印から敦賀へ引き揚げる。ダラットで愛しあった富岡に会うため、東京へ向かう。