かにこうせん
蟹工船
- 読了時間
- 約2時間3分
- 文字数
- 61,014字
- 読みやすさ
- 歯ごたえあり
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号
三行でいうと
- 函館を出た蟹工船博光丸に、貧しい村や町から集められた漁夫と十四、五の雑夫が乗り込む。
- カムサツカの海で、監督の浅川は病人も構わず働かせ、嵐の兆しがあっても川崎船を漁に出す。
- 仲間が倒れ、死者が海へ流されていくなかで、漁夫たちは少しずつ手を組むことを覚えていく。
登場人物
- 浅川
- 博光丸の漁業監督で、ピストルと棍棒を手に漁夫や雑夫を働かせる。
- 学生上り
- 周旋屋にだまされて船に来た東京の学生の一人で、仲間をつなぐ組織の案を紙に書く。
- 芝浦の漁夫
- 芝浦の工場にいたことがあり、労働者が働かなければ金持の懐に金は入らないと説く。
- 宮口
- 船の中に隠れていて見つかり、監督に便所へ閉じ込められた雑夫。
- 山田
- 脚気で寝たきりになり、船の上で死んだ漁夫。
- 船長
- 秩父丸の救難信号を受けて助けに向かおうとするが、監督に止められる。
- 給仕
- サロンで上役たちの世話をしており、そこで聞いた話を漁夫たちに伝える。
読みどころ
「おい地獄さ行ぐんだで!」の一声で幕が開く。工船は航海法の対象にも工場法の対象にもならず、監督の思うままに人を働かせられる場所として描かれる。人を人として扱わない場所で、ばらばらに集められた者たちはどうやって声を上げるのか。作品の中心にはその問いがある。
主人公と呼べる一人はいない。登場人物の多くに名前がなく、「学生上り」や「芝浦」のように経歴やあだ名で呼ばれる。物語を動かすのは個人より、二百人近い集団の気分の移り変わりである。虱や便所の臭い、凍える甲板の描写は容赦がない。その中で、川崎船がロシアの岸に流れ着いた漁夫たちの話や、仲間の通夜の場面が転機になっていく。
小林多喜二の代表作で、一九二九年に雑誌『戦旗』に発表された。プロレタリア文学を代表する作品として読み継がれている。北海道やカムサツカで働く人々の暮らしを、作者は「殖民地」の労働として書いた。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
三角波が立って大暴風の兆しが見えた朝、漁夫たちは川崎船を出すのをやめて引き上げる。水夫と火夫、雑夫も加わってストライキになる。学生上りや芝浦の漁夫ら九人の代表が船長室で要求を突きつけ、芝浦の漁夫が監督を殴り倒す。
夕方に駆逐艦が来ると、漁夫たちは味方が来たと思って万歳を叫ぶ。しかし着剣した水兵が乗り込み、代表の九人は駆逐艦へ連れていかれる。皆は「俺達には、俺達しか、味方が無えんだな。始めて分った」と口にする。仕事はそれまで以上に過酷になる。
漁夫たちは、代表を表に出したのが間違いだったと話し合う。今度は全員で一緒にサボることを決め、もう一度立ち上がる。附記によると、二度目のサボは成功した。監督と雑夫長は会社に首を切られ、漁夫や雑夫は警察の門からさまざまな働き場へ入っていく。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日