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こころ

こころ

夏目漱石

読了時間
約5時間21分
文字数
160,234字
読みやすさ
歯ごたえあり
表記
新字新仮名
読む速さ

初出: 「朝日新聞」1914(大正3)年4~8月

三行でいうと

  1. 鎌倉の海で知り合った先生に惹かれ、学生の私は東京の家へ通う。先生は毎月、友の墓に一人で参っている。
  2. 恋は罪悪だと語り、人間全体を信用しないという先生に、私は過去を話してほしいと迫り、いずれ話すと約束を得る。
  3. 大学を卒業した私は帰郷し、重い病の父を看病する。父が危篤に近づくなか、先生から分厚い手紙が届く。

登場人物

私
語り手の学生。鎌倉で先生と知り合い、東京の先生の家に足しげく通う。
先生
大学を出ているが仕事をせず、妻と下女と静かに暮らし、毎月雑司ヶ谷の友人の墓に参る。
奥さん
先生の妻で、名は静。先生の性質が変わった理由を知らず、私に悩みを打ち明ける。
父
私の父。腎臓を長く病み、郷里の家で療養している。
K
先生と同郷の友人。真宗の寺の次男で、精進という言葉を好み、道のために生きようとする。

読みどころ

先生はなぜ人を信じず、世間に出ないのか。なぜ毎月一人で友の墓に参るのか。若い私はその理由を知りたくて、先生の家に通い続ける。読者も私と同じように、手がかりを少しずつ渡されながら読み進めることになる。人を愛することと人を裏切ることが一人の心の中でどう結びつくのか。それがこの作品の中心にある問いである。

作品は上・中・下の三部に分かれ、部ごとに語りの調子が変わる。上では、私が見聞きした先生の言葉が断片のまま並んでいる。「恋は罪悪ですよ」や「金さ君」といった短い言葉は、下の手紙を読んでから振り返ると重みが変わる。中では、病床の父と東京の先生とを比べ続ける私の心の揺れにも注目したい。

夏目漱石が1914年に朝日新聞に連載した長編である。作中には明治天皇の崩御と乃木大将の殉死が描かれ、時代の終わりと人物の生き方が重ねられている。教科書で下の一部だけを読んだ人も多いだろう。上から通して読むと、先生の一言一言が違って聞こえるはずだ。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

父の容態が悪くなるなか、先生から会いたいという電報が届くが、私は行けないと返す。やがて分厚い手紙が届き、終わり近くの一句から、私は先生がもうこの世にいないと知る。私は危篤の父を残して東京行きの汽車に飛び乗り、車中で手紙を読む。

手紙には先生の過去が書かれていた。両親を亡くした先生は叔父に財産をごまかされ、人を信じなくなる。東京では軍人の未亡人の家に下宿し、そこのお嬢さんを愛するようになる。困窮した友人のKを同じ家に引き取るが、ある日Kからお嬢さんへの恋を打ち明けられる。先生は、Kが以前に使った「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」という言葉を本人に投げ返す。そしてKには黙ったまま、奥さんにお嬢さんとの結婚を申し込む。奥さんから婚約を聞かされた数日後、Kは自殺する。

先生はお嬢さんと結婚するが、罪の意識から妻に何も打ち明けられず、死んだつもりで生きてきた。明治天皇が崩御し、乃木大将が殉死したのをきっかけに、先生は自殺を決める。手紙は、妻には何も知らせず、すべてを私の腹の中にしまっておいてほしいという頼みで終わる。

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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日