それから
それから
- 読了時間
- 約5時間45分
- 文字数
- 172,073字
- 読みやすさ
- 歯ごたえあり
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「東京朝日新聞」、「大阪朝日新聞」1909(明治42)年6月27日〜10月4日
三行でいうと
- 三十になっても職に就かない長井代助は、父の金で読書と音楽に暮らしている。そこへ旧友の平岡が東京へ戻ってくる。
- 平岡の妻の三千代は、三年前に代助が平岡に取り持った女だった。借金に苦しむ夫婦を見て、代助の心は揺れ始める。
- 父と兄嫁は資産家の娘との縁談を急がせる。代助は縁談を受けるか、三千代のほうへ進むかの決断を迫られる。
登場人物
- 代助
- 長井家の次男で三十歳になる。職に就かず、父と兄からの金で一戸を構えて暮らしている。
- 三千代
- 平岡の妻で、亡くなった代助の学友菅沼の妹である。子を亡くしてから心臓を悪くしている。
- 平岡
- 代助の中学時代からの友人で、銀行の支店を辞めて東京へ戻り、のちに新聞社の経済部に入る。
- 長井得
- 代助の父で、維新のときに戦争に出た経験を持つ。実業界で財産を築き、誠実と熱心を説く。
- 誠吾
- 代助の兄で、父の関係する会社で重要な地位にある。主義や人生観を口にしない。
- 梅子
- 誠吾の妻で、代助の縁談の世話を焼く。代助に頼まれ、夫に内緒で金を用立てる。
- 門野
- 代助の家の書生で、何を言われても「そんなもんでしょうか」と答えて済ませる。
読みどころ
働かずに生きる男が、働かずには済まない立場へ追い込まれていく話である。代助は、生活のための労働を低いものと考えている。平岡との議論では「麺麭に関係した経験は、切実かも知れないが、要するに劣等だよ。」と言い切る。その考えが、友人の妻への思いとぶつかったとき何が起きるかが、この小説の中心にある。
代助の考えは理屈が通っていて、読者もうなずいてしまう。注目したいのは、代助が自分の心をずっと理屈で整理し続ける点である。椿の落ちる音、鈴蘭を漬けた鉢、百合の強い香など、花の描写は代助の気分の変化と重なって何度も出てくる。父の家の額や兄との鰻屋の場面には、明治の実業家の家の空気がよく出ている。
夏目漱石が1909年に朝日新聞に連載した長編で、『三四郎』『門』とあわせて三部作と呼ばれることが多い。日糖事件や日露戦争後の不景気など、連載当時の出来事が作中に入り込んでいる。そのため、当時の東京の暮らしを知る手がかりとしても読める。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
代助は梅子に縁談を断ると告げる。雨の日に三千代を自宅へ呼び、白百合の香のなかで、自分には三千代が必要だと打ち明ける。三千代は泣いて、なぜ棄てたのかと代助を責める。やがて顔を上げ、「仕様がない。覚悟を極めましょう」と答える。父は縁談の政略的な意味を隠さずに説くが、代助は断る。父はもう代助の世話はしないと言い渡す。
代助は平岡に手紙を出して会う。三千代は代助の家を訪ねた翌朝に卒倒し、病床にあった。代助は東京へ来てからの経緯をすべて話し、三年前から三千代を愛していたと告げて、三千代を譲ってほしいと頼む。平岡は渡すと答えるが、病気が治るまでは夫として看護すると言い、絶交を言い渡す。代助は、死骸だけを見せる積りかと取り乱す。
代助は夜に平岡の家の前をさまようが、中の様子は分からない。やがて平岡が代助の父へ手紙を送り、兄の誠吾が事実を確かめに来る。代助が本当だと認めると、兄は父が親子の縁を切ると伝え、自分ももう会わないと言って帰る。代助は職業を探してくると言って炎天の町へ飛び出し、電車に乗る。窓の外の赤いものが次々に頭のなかで回り出し、代助は頭が焼け尽きるまで電車に乗って行こうと決める。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日