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さんしろう

三四郎

夏目漱石

読了時間
約5時間38分
文字数
168,973字
読みやすさ
歯ごたえあり
表記
新字新仮名
読む速さ

初出: 「朝日新聞」1908(明治41)年9月1日~12月29日

三行でいうと

  1. 熊本の高等学校を卒業した小川三四郎は、大学に入るため汽車で上京する。車中で同じ宿に泊まる女や髭の男と出会う。
  2. 大学の池のほとりで、団扇をかざした女を見かける。のちに里見美禰子と知り、広田先生の引っ越しの手伝いで再会する。
  3. 菊人形見物の途中で美禰子と二人で抜け出し、「迷える子」という言葉を聞く。三四郎は美禰子の本心をつかめず迷う。

登場人物

小川三四郎
熊本の高等学校を出て、東京の大学の文科に入った二十三歳の青年。
里見美禰子
大学の池のほとりで三四郎が出会った女で、兄の恭助と暮らし広田先生の家に出入りする。
広田先生
高等学校で英語を教える独身の先生で、上京の汽車で三四郎に「滅びるね」と言った男。
野々宮宗八
理科大学の穴倉で光線の圧力を研究する学者で、三四郎の母が頼るように書いてきた人。
よし子
野々宮宗八の妹で、病院で三四郎と知り合い、のちに美禰子の家から学校へ通う。
佐々木与次郎
広田先生の家に住む選科の学生で、先生を大学の教授にしようと運動する。
原口
広田先生の友人の画工で、美禰子の肖像画を描く。
三輪田のお光さん
国元の娘で、三四郎の母が卒業後の嫁にと勧めてくる。

読みどころ

九州から出てきた青年が、東京で三つの世界に出会う。母のいる故郷と、広田先生や野々宮のいる学問の世界と、美しい女性のいるはなやかな世界である。三四郎はどの世界にも踏み込みきれず、その迷いがこの小説の芯になっている。美禰子が何を思っているのかは、三四郎にも読者にもはっきりとは見えない。

冒頭の汽車で、髭の男は「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と言う。この言葉を聞いた三四郎は、本当に熊本を出たような心持ちになる。池のほとりの椎の木、引っ越しの日に二階の窓から見る雲、菊人形の帰りに座った小川の縁。美禰子と過ごす場面には、空や雲がたびたび描かれる。三四郎はその場で気の利いた返事ができず、あとになって後悔する。その不器用さを地の文は少しおかしみを込めて書いている。

『三四郎』は夏目漱石が1908年に朝日新聞に連載した長編小説である。のちの『それから』『門』とあわせて前期三部作と呼ばれる。明治の大学と、壊しながら建て直されていく東京の様子も細かく描かれている。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

与次郎の運動は新聞の記事でつまずく。大学の外国文学の講師には別の人が決まりそうだと報じられた。広田先生が門下生に論文を書かせたとまで書かれ、筆者には三四郎の名が挙がっていた。与次郎は先生に謝り、先生は三四郎に、二十年前に一度だけ見た少女の夢を話す。

三四郎は原口の画室で金を返そうとするが、美禰子は受け取らない。帰り道に三四郎は「ただ、あなたに会いたいから行ったのです」と言う。そこへ車に乗った紳士が来て、美禰子を連れていく。演芸会の翌日、三四郎は風邪で寝込む。見舞いに来たよし子から、美禰子の縁談がまとまったと聞く。相手は美禰子の兄の友人で、前によし子をもらいたいと言った人だった。

治った三四郎は会堂の前で美禰子を待ち、借りた金を返す。「結婚なさるそうですね」と聞くと、美禰子は「我はわが愆を知る。わが罪は常にわが前にあり」とつぶやき、二人は別れる。三四郎は母の電報を受けて国へ帰る。東京に戻ったときには、披露の日はもう過ぎていた。原口の絵は「森の女」の題で展覧会に掛けられる。広田先生たちと絵を見に行った三四郎は、与次郎に題が悪いと言う。口の中では迷羊、迷羊と繰り返していた。

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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日