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「家族」の作品
親子やきょうだいの関係が物語の中心にある作品。
- 満願四年まえの夏、私は伊豆の三島で小説を書いていた。ある夜、酔って自転車で転び、町の医者に駈けつける。
- 黄金風景子供のころの私は、のろくさい女中のお慶をいびり続け、肩を蹴って泣かせたこともあった。
- セメント樽の中の手紙木曾川の発電所工事で、松戸与三はミキサーに追われながら一日じゅうセメントの樽を空けている。
- やまなし小さな谷川の底を写した二枚の幻燈の話だ。五月の水の底で、蟹の兄弟がクラムボンのことを話している。
- 手袋を買いに雪を初めて見た子狐が、冷たくなった両手を母さん狐に差し出す。母さん狐は町で毛糸の手袋を買ってやろうと考える。
- 蜜柑曇った冬の日暮れ、疲れと倦怠を抱えた「私」は、横須賀発の上り二等客車で発車を待っていた。
- 祭の晩山の神の秋祭りの晩、亮二は十五銭をもらってお旅屋へ出かけ、見世物小屋の「空気獣」に入ってしまう。
- トロッコ小田原と熱海の間で軽便鉄道の工事が始まり、八つの良平は土を運ぶトロッコを毎日見に行く。
- 牛女ある村に、体が大きく口のきけない女がいた。やさしい女で、一人の男の子を大事に育て、村の人から「牛女」と呼ばれた。
- 桜桃小説家の「私」は、幼い三人の子がいる家で、いつも冗談を言って明るくふるまっている。
- 牛人魯の叔孫豹は亡命の途中で一夜の契りを結び、のちに黒い牛のような男に救われる夢を見る。
- 虔十公園林縄の帯をしめていつも笑っている虔十は、子供らにばかにされて、笑わないふりをするようになる。
- 魚服記本州の北端にある馬禿山の滝のそばで、スワは父親と炭焼小屋に暮らしながら茶店の番をしている。
- じいさんばあさん文化六年の春、麻布竜土町の隠居所に白髪の老人と老女が移り住み、仲むつまじく暮らし始める。
- 狐月夜に七人の子供が本郷の祭へ歩いてゆく。文六ちゃんは母親の大きな下駄をはいていて、みんなに遅れてしまう。
- 葉桜と魔笛葉桜のころになると、老夫人は三十五年前に島根の城下まちで過ごした春を思い出す。
- 瓶詰地獄南の島の村役場が、浜に流れ着いた三本のビール瓶を封をしたまま海洋研究所へ送る。中身は雑記帳の切れ端らしい。
- 父帰る明治四十年頃の南海道の小さな町。父が家を出て二十年、母と三人の子はつつましく暮らしている。
- 春の鳥九州の城下町で英語と数学を教える「私」は、城山の頂で、不思議な笑い方をする少年に出会う。
- 黄いろのトマト町の博物館にある剥製の蜂雀が、朝早く来た「私」に、ペムペルとネリの兄妹の話を語りはじめる。
- 母子像厚木の基地に近い警察署に、中学一年の太郎の担任が呼び出される。太郎は火いじりの件で黙りこんでいる。
- 日本婦道記梅咲きぬ加賀藩の重職を務める多賀家の嫁加代は、和歌の才を認められ、もうすぐ奥義の允可がさがるところまで来ていた。
- 牛をつないだ椿の木牛曳きの利助さんは山道の椿の若木に牛をつなぎ、葉を食べさせてしまう。土地の地主にひどく叱られる。
- 木の都大阪の上町で育った私は、京都の高等学校に進み両親を失ってから、故郷の町とほとんど縁が切れていた。
- 高瀬舟江戸時代の京都では、遠島を言い渡された罪人を、高瀬川を下る小舟で大阪へ送った。舟には町奉行所の同心が付き添った。
- 日本婦道記尾花川琵琶湖畔の尾花川に住む太宰の屋敷には志士たちが集い、妻の幸子が心をこめてもてなしてきた。
- 一塊の土足かけ八年寝ていた倅の仁太郎が死に、お住は嫁のお民に壻を取って家に残ってもらおうと考える。
- 家霊坂道の途中にある老舗のどじょう店「いのち」。家業を嫌って家を出たくめ子は、母の病で呼び戻されて帳場に坐る。
- 最後の一句元文三年の大阪で、船乗り業の桂屋太郎兵衛を斬罪に処すると書いた高札が立てられる。
- 杜子春唐の都洛陽で財産を使い果たした若者杜子春が、寝る所もなく西の門の下で途方に暮れている。
- 春は馬車に乗って海辺の家で、胸の病気で寝ついた妻を彼が看病している。妻は寝台から庭の松の葉が光るのを眺めている。
- 小さき者へ妻を亡くした父が、まだ幼い三人の子どもに向けて、大人になったら読んでほしいと書き残した手紙だ。
- 秋女子大学で才媛と呼ばれた信子は、作家になると誰もが思っていた。従兄の俊吉との結婚も噂されていた。
- 日本婦道記不断草米沢藩士の登野村三郎兵衛に嫁いだ菊枝は、半年ほどで良人の態度が急に冷たくなり、わけも分からず離縁される。
- 日本婦道記松の花紀州徳川家の年寄役、佐野藤右衛門は烈女節婦の伝記『松の花』を校閲している。その朝、病床の妻やすが息をひきとる。
- 一兵卒満洲の野で、脚気を患う一兵卒が軍医に止められながら病院を出て、隊を追って一人で歩き出す。
- 日本婦道記箭竹万治二年の秋、将軍家綱は射ごこちのよい矢に、きまって「大願」の二字が彫られていることに気づく。
- 雛御一新の後に家が傾いた紀の国屋は、娘お鶴の見事な雛を、横浜の亜米利加人へ売ることに決める。
- 冬の日冬至の近いころ、肺を病む堯は間借りの二階から、葉を落とす木々と早く消える冬の日を毎日眺めている。
- 安井夫人日向国清武村の儒者の二男、仲平は痘痕と片目で背も低い。郷里では「仲平さんは不男だ」と蔭で言われていた。
- おじいさんのランプかくれんぼで東一君が倉から古いランプを持ち出す。おじいさんは叱ったあと、昔の話を聞かせ始める。
- 双生児ある死刑囚が教誨師にうちあけた話死刑を待つ男が先生に、裁判でも隠し通したもう一つの罪を打ち明ける。殺した相手は双子の兄だった。
- 千代女十二の時に綴方が雑誌で一等に選ばれた和子が、来年十九になる今、自分は駄目な女だと語り始める。
- 玄鶴山房ゴム印の特許で資産を作った堀越玄鶴は肺結核を患い、娘夫婦と寝たきりの妻のいる家の離れで床に就いている。
- 日本婦道記糸車松代藩の軽いさむらいの家の娘お高は、病む父と幼い弟を支え、糸繰りの内職で家計を助けている。
- きりぎりす二十四歳の妻が、五年連れ添った画家の夫へ別れを告げる。全編がその妻の語りかけでできている。
- 十三夜旧暦の十三夜の晩、原田の奥様となった阿関が、車も供もなく一人で実家の格子戸の前に立つ。
- 修禅寺物語伊豆の修禅寺村に住む面作師の夜叉王は、将軍頼家に似せた面を半年たっても納めずにいる。
- 日本婦道記藪の蔭八百石の大寄合の家に育った由紀は、二百石の安倍休之助に嫁ぐ。祝言の夜、休之助の帰りが遅れていた。
- 鮨坂と崖の多い町の鮨屋「福ずし」で、娘のともよは常連の男たちを見なれて育った看板娘である。
- 風琴と魚の町風琴を鳴らして薬を売る父と母に連れられ、旅を続ける少女の一家が、日の丸の旗の出た海辺の町で汽車を降りる。
- クララの出家千二百十二年の棕櫚の安息日の朝、アッシジの貴族の娘クララは、男たちが現れる不思議な夢から目をさます。
- 貝の火子兎のホモイは、流れで溺れかけたひばりの子を助ける。そのあと重い熱病にかかって寝込んでしまう。
- 将軍日露戦争の旅順で、白襷隊の兵たちが死地へ向かう。軍司令官のN将軍は兵の手を握り、大元気にやれと励ます。
- 日本婦道記墨丸正保三年の霜月、五歳のお石が鈴木家にひきとられる。陰口を哀れに思った平之丞は、墨丸という呼び名を選んだ。
- 聖家族九鬼の告別式の日、気分を悪くした細木夫人を一人の青年が助ける。九鬼にかわいがられていた河野扁理だった。
- 半七捕物帳半鐘の怪江戸の下町で、火事でもないのに夜ごと半鐘が鳴る。見張りがいるあいだは鳴らず、気をゆるめると鳴り出す。
- 半七捕物帳勘平の死安政五年の暮れ、京橋の鉄物屋和泉屋の素人芝居で、勘平を演じた若旦那の角太郎が本物の刀で腹を切って死ぬ。
- 半七捕物帳お文の魂冷たい雨の夜、少年の「わたし」はKのおじさんから、叔父が語らなかった「おふみの一件」を聞かせてもらう。
- 押絵と旅する男魚津へ蜃気楼を見に行った帰り、私は夜の汽車で、平たい荷物を抱えた老人と二人きりになる。
- のんきな患者肺を病む吉田は寒に入って高い熱を出し、身動きもできないまま眠れない夜の不安に苦しむ。
- ひかりの素足山小屋で父と夜を明かした一郎と弟の楢夫。朝になって、楢夫は風の又三郎に言われたことがこわいと泣き出す。
- 城のある町にて幼い妹を亡くした峻は、その死を落ちついて考えたくて、城跡のある町の姉の家へやって来る。
- 清貧の書語り手の私は、東京に出て四年の間に三人の男の妻となった。三人目の夫は絵を描く与一だ。
- とむらい機関車汽車で乗り合わせた大学生に、H駅の機関庫に勤めていた男が「葬式機関車」の話を語りはじめる。
- 赤ひげ診療譚氷の下の芽年の暮れの養生所に、母親に伴われた十九歳の娘おえいが来る。身ごもった子をおろしてもらうためだ。
- ヴィヨンの妻詩人の大谷の妻である「私」は、酒を飲み歩いて帰らない夫を待ち、病弱な坊やと小金井の荒れた家で暮らしている。
- にごりえ新開の町の店「菊の井」で一番の売れっ子のお力は、我ままに振る舞いながら客を呼び込む。
- 戯作三昧天保二年の秋、六十を越えた曲亭馬琴は朝湯で愛読者に八犬伝を褒められ、湯船では自作の悪口を聞かされる。
- 東京八景(苦難の或人に贈る)昭和十五年の夏、三十二歳の私は伊豆の山村の安宿にこもる。十年間の東京生活を書こうと地図を広げる。
- 赤ひげ診療譚駈込み訴え小石川養生所の見習医保本登は、赤髯こと新出去定の助手として死にゆく老人と重傷の女人夫に立ち会う。
- 山椒大夫筑紫へ行ったきりの父を尋ねて、母と安寿・厨子王の姉弟、女中の姥竹が越後の道を旅している。
- 赤ひげ診療譚鶯ばか保本登は去定の供で伊豆さま裏の長屋を訪ね、目笊に千両の鶯がいると言い張る十兵衛を診る。
- 隣の嫁中学を出て百姓を始めたばかりの省作は、稲刈りの疲れで起きられず、母や姉にせかされて朝を迎える。
- グスコーブドリの伝記イーハトーヴの森に生まれたブドリは、冷害の飢饉で両親を失い、妹のネリも見知らぬ男に連れ去られる。
- 地獄変堀川の大殿様に長く仕えた者が、本朝第一の絵師良秀と、地獄変の屏風の由来を語り始める。
- 阿部一族寛永十八年の春、肥後の大名細川忠利が病で亡くなる。許しを得た家臣十八人が、次々に殉死していく。
- 夫婦善哉一銭天婦羅屋の娘の蝶子は曾根崎新地の芸者になり、声自慢の陽気な妓として売れっ妓になる。
- 幼年時代実家から一町と離れていない家へ貰われた私は、実の母に会うため毎日のように実家へ通っていた。
- 女生徒五月の最初の朝、眼鏡をかけた女学生の「私」が目をさまし、亡き父を思いながら犬と遊んで家を出る。
- 雲は天才である岩手の村の小学校で代用教員を務める二十一歳の新田耕助は、生徒との課外授業に何より熱を入れている。
- ちいさこべ神田の大工の店「大留」の若棟梁茂次は、川越の普請先で、江戸の大火で両親が死んだと知らされる。
- 野菊の墓矢切村の旧家で暮らす十五歳の政夫と、母の看病に来た従妹の民子は、何より仲の好い二人だった。
- すみだ川俳諧師の蘿月は今戸に住む妹のお豊を訪ね、甥の長吉と幼馴染のお糸の仲を案じる話を聞く。
- 吉野葛作家の「私」は、吉野の山奥に伝わる南朝の末裔、自天王を題材に歴史小説を書こうと考えていた。
- ろまん灯籠洋画家の入江新之助が亡くなったあとの家には、ロマンスを好む五人の兄妹と祖父母と母が暮らしている。
- 蘆刈十五夜の夕方、わたしは後鳥羽院の離宮の跡をたずねて山崎へ行き、淀川の洲で月を眺める。
- 一九二八年三月十五日小樽で労働運動に加わる夫の龍吉を、妻のお惠は誇りと不安の入りまじった気持ちで見守っている。
- 永日小品正月の客や泥棒騒ぎ、猫の死など、身の回りの小さな出来事を綴った二十五の小品が並ぶ。
- 生まれいずる悩み北海道の農場で筆が進まない私は、十年前に絵を見せに来た少年のことを思い出す。
- 硝子戸の中風邪で書斎にこもる作家が、硝子戸の中で見聞きした小さな出来事を新聞に書きつづっていく。
- 思い出す事など胃の病で入院していた余は、転地先の修善寺で病を再発させ、寝たまま東京の病院へ戻ってくる。
- 押絵の奇蹟病床のピアノ教師トシ子が、名女形の菱田新太郎へ長い手紙を書く。二人は同じ病で血を吐いていた。
- 党生活者軍需品を作る倉田工業に臨時工として入り込んだ私は、警察に追われながら非合法の党活動を続けている。
- 雁明治十三年、医科の学生の岡田は散歩の途中、無縁坂の家の窓にいる女と会釈を交わすようになる。
- 平凡三十九歳の小役人である語り手が、内職の賃訳が途切れた暇に、自分の平凡な半生を書き始める。
- 病牀六尺六尺の寝床から動けなくなった正岡子規が、新聞に毎日短い文章を寄せていく随筆である。
- 菜穂子母の三村夫人は、作家の森於菟彦と出会ってからの日々を、娘の菜穂子に宛てた日記に綴る。
- 斜陽敗戦の年の冬、かず子は母と二人で東京の家を手放し、伊豆の山荘に移ってひっそりと暮らしはじめる。
- 銀の匙書斎の小箱にしまった銀の匙をきっかけに、私は伯母さんに背負われて育った幼いころを語り出す。
- 新ハムレット先王が急死して二箇月、叔父クローヂヤスが王位を継いで王妃と結婚する。王子ハムレットは喪服のまま式に出る。
- 柳橋物語研屋の祖父と暮らすおせんは、上方へ発つ大工の庄吉から、帰るまで待っていてくれと頼まれる。
- 正義と微笑十六歳の芹川進は兄にマタイ伝を読んでもらい、微笑して正義を行うと心に決めて日記をつけ始める。
- 蓼喰う虫要と美佐子の夫婦は互いに愛し合えず、夫も認めたうえで妻は阿曽と会い続けている。
- 津軽作家の私は津軽のことを書くために、ある年の五月に作業服姿で東京を発ち、故郷の津軽半島を一周する。
- 浮雲役所を免職になった内海文三は、身を寄せる叔父の家の娘お勢と一緒になる日を当てにしていた。
- 右大臣実朝実朝の死から二十年後、近習だった語り手が山奥で、仕えた将軍家の日々を問われるままに語り出す。
- 門役所に勤める宗助は、崖下の借家で妻の御米と静かに暮らしている。子はなく、二人は過去をあまり語らない。
- 道草外国から帰り駒込に世帯を持った健三は、雨の日の道で、縁を切ったはずの昔の養父の島田に出会う。
- 田舎教師中学を出た林清三は、家が貧しく進学をあきらめ、弥勒の村の小学校に教員として赴任する。
- 渋江抽斎語り手のわたくしは古い武鑑を集めるうち、弘前の医官渋江氏の蔵書印がある本に何度も出会う。
- それから三十になっても職に就かない長井代助は、父の金で読書と音楽に暮らしている。そこへ旧友の平岡が東京へ戻ってくる。
- 彼岸過迄大学を出たが職の見つからない田川敬太郎は、平凡を嫌い、世の中の不思議な事件に出会いたいと願っている。
- 虞美人草哲学好きの甲野さんと快活な宗近君が春の京都を旅する。東京では甲野さんの異母妹の藤尾が、詩人肌の小野を思うままに操っている。
- 季節のない街目に見えない市電を毎日運転する六ちゃんが、どぶ川を越えて貧しい長屋の街へ猫を送り届ける。
- 破戒信州飯山の小学校で教える瀬川丑松は、被差別部落の出身であることを隠せという父の戒めを守って暮らしている。
- 行人二郎は友人の三沢と大阪で会う約束をするが、三沢は胃を病んで入院し、同じ病院の芸者を気にかける。