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めおとぜんざい

夫婦善哉

織田作之助

読了時間
約1時間2分
文字数
30,557字
読みやすさ
ふつう
表記
新字新仮名
読む速さ

初出: 「海風」1940(昭和15)年4月

三行でいうと

  1. 一銭天婦羅屋の娘の蝶子は曾根崎新地の芸者になり、声自慢の陽気な妓として売れっ妓になる。
  2. 妻子のある化粧品問屋の息子の柳吉と深い仲になり、勘当された柳吉と駈落ちして所帯を持つ。
  3. 蝶子はヤトナで稼いで店を出す金を貯めるが、柳吉はたびたび遊びに使い、店も長くは続かない。

登場人物

蝶子
種吉とお辰の娘で、十七で芸者になり、駈落ちのあとはヤトナで稼いで暮らしを支える。
維康柳吉
梅田新道で理髪店向きの化粧品を卸す問屋の息子で、蝶子と暮らしたため父親に勘当される。
種吉
蝶子の父で、上塩町の路地の入り口で一銭天婦羅を揚げて商っている。
お辰
蝶子の母で、家に来る借金取との掛け合いを受け持っている。
おきん
もとは北の新地の芸者で、今は高津でヤトナの周旋屋をしている。
金八
北の新地で蝶子と同じ抱主のもとにいた芸者で、今は鉱山師の後妻になっている。

読みどころ

甲斐性のない男に尽くす女の話だが、蝶子は泣き寝入りしない。柳吉が貯金を使い込めば折檻し、また働いて貯め直す。柳吉は何度も家を出ては戻り、蝶子はそのたびに迎え入れる。この二人がなぜ離れないのかが、作品の中心にある。

読むときは、大阪の食べ物の店の名に注目したい。柳吉が蝶子を連れ歩くのは、安くてうまい下手もの料理の店ばかりだ。自由軒のライスカレーや出雲屋のまむしは、二人の仲が動く場面にも出てくる。会話は大阪弁のままで、柳吉のどもりも台詞に写されている。地の文は長い一文で出来事を重ね、何年もの暮らしを速い調子で運んでいく。

織田作之助は大阪を舞台に書き続けた作家である。題名は、法善寺の境内に実際にあった善哉の店の名から取られている。この作品は昭和十五年(1940年)に発表された。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

果物屋を始めてまもなく柳吉は腎臓結核で入院し、片方の腎臓を取る手術を受ける。同じころお辰が子宮癌で死ぬ。柳吉は退院後に湯崎温泉で養生する。だが蝶子の仕送りとは別に妹へ無心し、芸者を揚げて遊んでいた。

大阪へ戻った蝶子は、昔の朋輩の金八から金を借りてカフェ「サロン蝶柳」を開き、店は繁盛する。柳吉の父親が危篤になると、蝶子は二人分の紋附を作って知らせを待つ。ところが柳吉からの電話は、父親が死んだことと、蝶子は来ない方がよいことを告げるものだった。蝶子は二階に閉じこもり、ガスの栓をひねる。

紋附を取りに帰った柳吉が気づいて医者を呼び、蝶子は助かる。柳吉はそのまま姿を消す。種吉のもとに届いた別れの手紙は、種吉が焼き捨てた。十日後に戻った柳吉は、遺産を取るための策戦だったと言い、蝶子を法善寺の「めおとぜんざい」へ誘う。一人に二杯ずつ出る善哉のわけを講釈する柳吉に、蝶子は「一人より女夫の方がええいうことでっしゃろ」と返す。やがて二人は浄瑠璃に凝り、素義大会で柳吉は蝶子の三味線で「太十」を語って二等賞を取る。景品の大きな座蒲団は蝶子が毎日使った。

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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日