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つがる

津軽

太宰治

読了時間
約3時間43分
文字数
111,148字
読みやすさ
歯ごたえあり
表記
新字旧仮名
読む速さ

初出: 「新風土記叢書7 津輕」小山書店、1944(昭和19)年11月15日

三行でいうと

  1. 作家の私は津軽のことを書くために、ある年の五月に作業服姿で東京を発ち、故郷の津軽半島を一周する。
  2. 青森で昔なじみのT君に会い、蟹田では中学時代の友人N君の家で、蟹と酒で手厚くもてなされる。
  3. 本州の北端の竜飛、金木の生家、西海岸と巡り、最後に育ての親のたけを探して小泊の港へ向かう。

登場人物

私
津軽に生まれ育った作家で、生まれてはじめて津軽半島を三週間ほどかけて一周する。
T君
昔、私の家で鶏舎の世話をしていた同い年の男で、いまは青森市の病院に勤めている。
N君
中学時代の唯一の友人で、蟹田で家業の精米業を継ぎ、町会議員を務めている。
Sさん
病院の蟹田分院の事務長で、私を自宅に招いて熱狂的にもてなす。
Mさん
今別に住む小説好きの若い人で、私とN君を三厩まで送る。
アヤ
金木の生家に仕える男で、山歩きに付き添い、山菜を採ってくれる。
中畑さん
五所川原に住む恩人で、二十代の私の不始末の後片付けを引き受けてくれた。
たけ
私が三つから八つになるまで子守をした女で、いまは小泊で金物屋を営んでいる。

読みどころ

故郷を愛する気持ちと憎む気持ちが、この作品の芯にある。太宰治は序編で、故郷に贈る言葉として「汝を愛し、汝を憎む。」と書いた。旅の目的について私は、人の心と人の心の触れ合いを研究する科目を追うと述べる。名所の案内ではない。津軽人とは何かを見極めようとする旅である。

読むときは、酒席の場面と語り手の口調に注目したい。Sさんが妻に次々と用事を言いつける長い台詞は、津軽人の愛情の表し方として描かれる。買った鯛を宿で五切れにされて悔しがる場面のように、自分を笑う書き方も多い。その合間に凶作の年表や古い紀行文の引用が挟まり、土地の歴史が少しずつ重なっていく。

太宰治が出版社の編集者に勧められて書いた作品で、自作の『思ひ出』の一節が何度も引かれる。1944年に小山書店の『新風土記叢書』の一冊として刊行された。戦時中の旅なので、国防上の理由で描写を控えると断る箇所もある。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

小泊に着くと、たけの金物屋には錠がかかっていた。近所で聞くと、運動会に出かけたという。私は掛小屋を一軒ずつのぞいて尋ね歩くが、たけは見つからない。縁がないのだと諦め、帰りのバスを待つことにする。

最後にもう一度家の前へ行くと、錠が外れていた。腹痛で薬を取りに帰ったたけの子供に案内され、ついにたけと再会する。たけは「あらあ。」と言ったきり、私を小屋に座らせて黙って運動会を見る。私はその隣で、生まれてはじめて心の平和を感じる。

やがてたけは私を竜神様の桜へ誘う。八重桜の枝の花をむしりながら、三十年近く会いたかった思いを一気に語り出す。私はたけの強く遠慮のない愛情に触れ、自分がたけに似ていると気づく。忘れられない人はT君、中畑さん、アヤ、たけで、皆かつて私の家にいた人だと私は書く。物語は「元気で行かう。絶望するな。では、失敬。」の言葉で終わる。

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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日