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うきぐも

浮雲

二葉亭四迷

読了時間
約3時間45分
文字数
112,199字
読みやすさ
歯ごたえあり
表記
新字新仮名
読む速さ

三行でいうと

  1. 役所を免職になった内海文三は、身を寄せる叔父の家の娘お勢と一緒になる日を当てにしていた。
  2. 叔母のお政は免職を知って態度を変え、要領よく出世した同僚の本田昇が家に入りびたるようになる。
  3. 昇に誘われてお勢は菊見に出かける。文三はお勢の心が昇へ移ったのではと疑い、ひとりで悩み始める。

登場人物

内海文三
静岡の生まれで、父の死後に叔父の家に引き取られ、某省に勤めていたが免職になる。
お勢
叔父孫兵衛の娘で十八歳。塾で英学を学び、帰宅してからは文三に英語を教わっている。
お政
孫兵衛の後妻でお勢の母。地代や貸金の取り立てまで、家のことを一人で切り回している。
本田昇
文三の同僚。課長に取り入るのがうまく、免職を免れたうえに一等上がる。
園田孫兵衛
文三の叔父。浜の茶店の支配人をしていて、ふだんは家にいない。
お鍋
園田家の下女。

読みどころ

筋だけを取り出せば、職を失った青年が想いを寄せる娘を同僚に取られかける話である。ただ、この小説が丁寧に追うのは事件よりも文三の頭の中だ。言い出そうとしては飲み込み、疑っては打ち消す。その堂々めぐりが何十ページも続く。誇りを捨てて課長に頭を下げるか、捨てずに愛する人を失うか。文三はどちらも選べないまま立ち尽くす。

読むときは、語り手の調子の変化に注意したい。序盤は戯作めいた軽口で役人の髭や服装をからかい、お政のまくし立てる台詞も落語のように弾む。お勢の「人じゃアないの、アノ真理」のような台詞には、新しい学問をかじった娘の気取りがよく出ている。それが後半に進むと、笑いが薄れて文三の心の動きを細かく分析する文章に変わる。団子坂の菊見と、昇に「痩我慢なら大抵にして置く方が宜かろうぜ」と言われる場面は、話の流れが変わるところなので見逃さないでほしい。

二葉亭四迷はロシア文学の翻訳者でもあり、話し言葉に近い文体で小説を書く試みに取り組んだ。第一編には坪内逍遥が春の屋主人の名で序を寄せている。日本の近代小説の出発点の一つに数えられる作品で、長く、古い言い回しも多い。それでも人物の台詞は今読んでも生々しい。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

文三は昇から課長への橋渡しを持ちかけられて断り、叔母とお勢の前で笑いものにされる。その夜、文三は昇に絶交を言い渡すが、言い負かされる。叔母に昇を頼れと説かれた文三はお勢に相談する。ところがお勢は昇をかばい、昇が気に入ったと言い放つ。文三は今までのことは水に流そうと告げて部屋を出る。

文三は下宿を探しに出るが、決めきれずに家へ戻る。後日、お勢と話そうとして部屋に入り袂をつかむ。お勢は食事の席でそのことを母の前で責め立て、叔母にも嫌味を言われて文三は涙を落とす。それでも文三は家を出ない。お勢は昇とふざけ合う仲になるが、知り合いの娘の縁談話をきっかけに様子が変わる。昇に冷たくなり、編物の夜稽古に通い始め、昇の足も遠のく。

文三はお勢の目を覚まさせたいと思いつめるが、手立てが見つからない。ある夕方、お勢が人違いで文三に声をかけ、笑ってみせる。文三は嬉しくなり、もう一度話してみて聞き入れられなければ叔父の家を出ようと決める。そうして二階へ戻ったところで、原文は終わっている。

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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日