にごりえ
にごりえ
- 読了時間
- 約41分
- 文字数
- 20,126字
- 読みやすさ
- 歯ごたえあり
- 表記
- 新字旧仮名
初出: 「文芸倶楽部」1895(明治28)年9月号
三行でいうと
- 新開の町の店「菊の井」で一番の売れっ子のお力は、我ままに振る舞いながら客を呼び込む。
- 雨の日に呼び込んだ結城朝之助が通い始め、お力は彼にだけ身の上を打ち明けたくなる。
- 一方でお力に通い詰めて落ちぶれた源七は、妻と幼い子を抱えながらお力を忘れられずにいる。
登場人物
- お力
- 菊の井の一枚看板で、我ままに振る舞いながらも客を呼ぶのがうまい女。
- 結城朝之助
- 自ら道楽者と名のる無職で妻子のない客で、週に二三度お力のもとへ通う。
- 源七
- もとは蒲団屋で、お力に通い詰めて貧乏になり、今は土方の手伝いをしている男。
- お初
- 源七の女房で、蝉表の内職をして貧しい暮らしを支えている。
- 太吉
- 源七とお初の幼い息子。
- お高
- 菊の井でお力と一緒に働く朋輩の女。
読みどころ
お力は客の前では陽気に騒ぎ、誰に対しても強気な口をきく。けれども一人になると、自分の生き方の行き先が見えずに苦しんでいる。この作品の中心にあるのは、抜け出せない境遇に置かれた人が何を抱えて生きているのか、という問いだ。お力が叫ぶ「これが一生か、一生がこれか」の一言に、その苦しさが詰まっている。
文章は句点が少なく、地の文と台詞が読点でつながって長く流れていく。最初は読みにくいが、声に出すつもりで追うと会話の調子が生き生きと伝わってくる。お力のいる菊の井と、源七の一家が暮らす裏長屋が交互に描かれる構成にも注目したい。五章ではお力の朋輩たちの身の上も語られ、新開の町に生きる女たちの姿が広がっていく。
樋口一葉は明治の女性作家で、短い生涯の終わりに名作を続けて書いた。この作品は明治28年に雑誌『文芸倶楽部』に発表され、一葉の代表作の一つとされる。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
盆の十六日の夜、お力は座敷で唄う途中に店を抜け出し、横町の闇をさまよう。そこで結城に出会い、店に連れ帰って大湯呑で酒をあおる。お力は祖父と父が志を果たせずに終わったこと、七つの冬に買いに出た米を溝へ落とし、家に帰れず泣いたことを語る。その夜、結城は菊の井に泊まる。
源七は盆に入っても仕事に出ず、お初と言い争う。そこへ太吉が菊の井の姉さんからもらったかすていらを持ち帰る。お初はそれを裏の空地へ投げ捨て、怒った源七は離縁を言い渡す。お初は謝っても聞き入れられず、太吉を連れて家を出ていく。
盆が過ぎて幾日か後、新開の町から棺が二つ出る。お力は切られて死に、源七は切腹していた。二人が合意の上だったのか、お力が逃げるところを切られたのか、町の人の説は分かれたまま定まらない。お寺の山から光り物が飛ぶのを見た者がある、と伝えられて話は終わる。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日