かいのひ
貝の火
- 読了時間
- 約29分
- 文字数
- 14,296字
- 読みやすさ
- ふつう
- 表記
- 新字新仮名
三行でいうと
- 子兎のホモイは、流れで溺れかけたひばりの子を助ける。そのあと重い熱病にかかって寝込んでしまう。
- 病が治ったホモイのもとにひばりの親子が来て、鳥の王からの贈り物として赤い火の燃える宝珠を置いていく。
- 玉を持ったホモイは野原の動物たちに敬われていばり始め、狐の誘いに乗って悪いことに加わっていく。
登場人物
- ホモイ
- 子兎。溺れかけたひばりの子を助け、その礼に貝の火を贈られる。
- 兎のお父さん
- ホモイの父。玉を調べ、光をなくさないよう気をつけろと言い聞かせる。
- 兎のお母さん
- ホモイの母。熱を出したホモイに薬を渡し、玉の入った函を預かる。
- 母親のひばり
- 子を助けられた礼に、王からの贈り物として貝の火を届ける。
- 狐
- 以前ホモイをいじめていた。ホモイの家来になり、角パンを盗んでくる。
- むぐら
- 土の中に住む。明るい所の仕事はできないと断り、ホモイを怒らせる。
- 梟
- 狐の硝子箱に捕まっていた鳥の一羽。
読みどころ
善い行いで手に入れた宝を、そのまま持ち続けることはできるのか。この話は子兎のホモイを通してその問いを考えさせる。ホモイは命がけでひばりの子を救い、その礼に貝の火を贈られる。ところが周りから大将のように扱われるうちに、ホモイの振る舞いは少しずつ変わっていく。
読むときは、玉の中で燃える火の描写に目を留めたい。噴火口や稲妻、花畑のように見える火は、場面ごとに姿を変える。お父さんが玉を確かめるたびに玉がどう見えるかを追うと、話の運びがよく分かる。野原で鳴るつりがねそうの鐘の音も、朝ごとに同じ響きで繰り返される。
宮沢賢治は、動物を主人公にした童話を数多く書いた。この作品もその一つで、兎や狐や鳥がていねいな言葉でやりとりする。子どもに語りかける口調のまま、得意になる心の危うさを描いている。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
ホモイはむぐらを脅し、狐が盗んできた角パンを受け取る。狐がむぐらの親子をいじめるのも止めずに見ていた。そのたびにお父さんはホモイを叱り、玉はもう駄目になっていると言う。しかし函を開けると、貝の火は前よりも美しく燃えていた。ホモイは、自分は生まれつき玉と離れないようになっていると言い張る。
霧の朝、狐は網で鳥を捕まえて硝子箱に入れ、動物園をやろうと持ちかける。ホモイは鳥に頼まれて箱を開けようとするが、狐に食い殺すと脅されて家へ逃げ帰る。玉を見ると、針でついたほどの白い曇りがあった。家族でかわるがわる磨いても、曇りはかえって大きくなる。一晩油に漬けておくと、夜中には赤い火が消えて鉛の玉のようになっていた。
お父さんはホモイを連れて野原へ行き、狐に決闘を挑む。狐は箱を置いて逃げ、箱からはひばりの親子を含む百羽ほどの鳥が出てくる。お父さんが白い石になった玉を鳥たちに見せると、玉は割れて煙のように砕け、その粉がホモイの目に入る。粉は集まって元の貝の火に戻り、窓から外へ飛んで行った。梟は「たった六日だったな。ホッホ」とあざ笑って去り、ホモイの目は白く濁って見えなくなる。お父さんはホモイの背中を静かにたたき、泣くなと言う。目はきっとまたよくなる、お父さんがよくしてやると慰める。
読んでみる
青空文庫で無料で読む図書カード:貝の火本で読む
注や解説の付いた文庫は、言葉の意味や時代背景を確かめながら読めます。
次に読むなら
公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日