じゅうさんや
十三夜
- 読了時間
- 約26分
- 文字数
- 12,556字
- 読みやすさ
- 歯ごたえあり
- 表記
- 新字旧仮名
初出: 「文藝倶樂部・臨時増刊閨秀小説」博文館、1895(明治28)年12月10日
三行でいうと
- 旧暦の十三夜の晩、原田の奥様となった阿関が、車も供もなく一人で実家の格子戸の前に立つ。
- 喜んで迎える両親に阿関は言い出せずにいたが、夫の勇から受けた仕打ちを打ち明けて離縁を願う。
- 実家を出て夫の家へ戻る途中、上野の淋しい道で、車夫が急に車を止めて引くのが嫌になったと言う。
登場人物
- 阿関
- 斎藤の娘で、原田勇に嫁いで七年になり、太郎という子がいる。
- 原田勇
- 阿関の夫で奏任官の身分にあり、太郎が生まれてから阿関につらく当たるようになった。
- 太郎
- 阿関と勇の子で、阿関は寝かしつけてから家に置いてきた。
- 斎藤主計
- 阿関の父で、上野の新坂下に妻と息子の亥之助と暮らす。
- 亥之助
- 阿関の弟で、夜学に通い、最近昇給した。
- 録之助
- 小川町の烟草屋の一人息子だった男で、阿関とは幼なじみである。
読みどころ
家と子のために耐え続けるか、苦しさから逃れて一人になるか。十三夜の一晩、阿関はその間で揺れる。娘を思う両親の言葉も、それぞれの立場から出たものとして描かれる。誰の言い分にも理があり、簡単には片づかない。そこにこの作品の重さがある。
文章は句点が少なく、地の文と台詞が切れ目なく続く。阿関の訴えと母の怒り、父の長い諭しは、それぞれ声の調子が違う。誰が話しているかを追うと読みやすい。話は上と下に分かれ、下では帰り道の思いがけない出会いが描かれる。月や薄といった十三夜の景色が場面ごとに添えられている点にも注目したい。
樋口一葉は明治の作家で、二十代の半ばで亡くなった。この作品は『たけくらべ』『にごりえ』と並んで代表作に数えられる。1895年(明治28年)に雑誌『文芸倶楽部』に発表された。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
阿関の話に母は怒り、勇に会って言い返すべきだと言う。父は、離縁すれば太郎は原田のものになり、二度と顔を見に行けなくなると諭す。亥之助の勤め口も原田の口利きによるものだと言い、「同じく不運に泣くほどならば原田の妻で大泣きに泣け」と告げる。阿関は離縁の願いを我ままだったと取り下げる。今夜限り自分は死んだ気になって太郎を守ると言い、車で原田の家へ帰る。
上野に入ってすぐ、車夫は車を止めて、もう引くのが嫌になったと言う。阿関が広小路までと頼むと車夫は詫びて引き受けるが、その顔を見て、阿関は幼なじみの高坂録之助だと気づく。録之助は阿関の嫁入りの噂が立った頃から遊び続け、家も商売も失った。妻は子を連れて実家へ戻り、その子は昨年の暮れにチフスで死んだと語る。阿関は十二の年から十七まで、いつかあの店に座るものと思っていた。録之助を忘れられないまま原田へ嫁いだのだった。
阿関は録之助の車には乗れないと言い、広小路まで並んで歩く。広小路に出ると紙幣を紙に包んで渡し、以前の録さんに戻ってほしいと言って別れを告げる。録之助はそれを思い出にすると言って受け取り、空車を引いて去る。二人は東と南へ別れていく。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日