ぐすこーぶどりのでんき
グスコーブドリの伝記
- 読了時間
- 約51分
- 文字数
- 25,166字
- 読みやすさ
- ふつう
- 表記
- 新字新仮名
三行でいうと
- イーハトーヴの森に生まれたブドリは、冷害の飢饉で両親を失い、妹のネリも見知らぬ男に連れ去られる。
- てぐす工場や沼ばたけで働きながら本で学んだブドリは、クーボー大博士に認められて火山局に入る。
- 火山を操って肥料の雨を降らせるまでになったブドリが二十七の年、あの寒い気候がまた来る兆しが見える。
登場人物
- グスコーブドリ
- イーハトーヴの大きな森で、木こりの家に生まれた少年。
- ネリ
- ブドリの妹で、飢饉の年に籠をしょった目の鋭い男に連れて行かれる。
- グスコーナドリ
- ブドリの父で、どんな大きな木でもわけなく切る名高い木こり。
- てぐす飼いの男
- ブドリの森を買い取っててぐす工場を建て、ブドリを働かせる男。
- 赤ひげ
- 沼ばたけでオリザを作る主人で、周りから山師と呼ばれながら大きな賭けを続ける。
- クーボー大博士
- イーハトーヴの市で学校を開く学者で、ブドリを火山局へ送る。
- ペンネンナーム
- イーハトーヴ火山局の技師で、ブドリに器械の扱い方と観測を教える。
読みどころ
物語の中心にあるのは、飢饉で家族を失った少年が人を飢えさせない仕事へ向かう道のりだ。ブドリは森でも沼ばたけでも、言われた仕事をこなしながら本を手放さない。イーハトーヴへ向かう汽車の中で、ブドリはみんながつらい思いをしないで沼ばたけを作れるくふうをしたいと願う。その願いが最後の章まで物語を引っぱっていく。
自然を描く言葉と科学の言葉が、同じ調子で並ぶところに注目したい。クーボー大博士の試問に、ブドリは工場の煙の色と形をよどみなく答える。雲の海に張った網が桃いろや青に光る場面では、技術の仕事がそのまま美しい景色として描かれる。沼ばたけの主人と隣の男が「なんだって」と言い合う場面のように、笑える場面も多い。
宮沢賢治は花巻の農学校で教え、のちに農家を回って肥料の相談を受けた。冷害や肥料や天候の話は、その仕事と地続きの題材だ。本作は1932年に雑誌『児童文学』に発表され、賢治が生前に世に出した数少ない童話のひとつである。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
サンムトリ火山では、ペンネン技師とブドリが工作隊と山腹に穴を開け、熔岩を海へ流して市を守る。四年のうちに潮汐発電所が二百も建ち、技師心得になったブドリは雲の海から硝酸アムモニヤの雨を降らせる。その年は十年になかったほどの豊作になる。ところが村を通りかかったブドリは、オリザが倒れたのは火山局のせいだと言う百姓たちに殴られ、病院に運ばれる。新聞によれば、肥料の入れ方をまちがって教えた農業技師が火山局のせいにしていた。病院には大人になったネリが訪ねてくる。ネリは連れ去った男に牧場の近くで置き去りにされ、その牧場の息子と結婚していた。
それからの五年、ブドリは赤ひげの主人やネリの家族と行き来して暮らす。昔の仲間から父母の墓の場所を教わり、白い石灰岩の墓を建てる。ブドリが二十七の年、あの寒い気候がまた来る。ブドリはクーボー大博士に、カルボナード火山島を噴かせれば炭酸ガスで地球が暖まるかを尋ねる。博士はできると答えるが、最後の一人はどうしても逃げられない。六十三のペンネン技師が自分が行くと言うが、ブドリは技師が残らなければ後のくふうがつかないと説き、技師は黙ってうなだれる。
三日の後、火山局の船がカルボナード島にやぐらを建てる。したくが済むと、ブドリはみんなを船で帰して一人で島に残る。次の日、イーハトーヴの人たちは空が緑いろに濁り、日や月が銅いろになるのを見る。三四日たつと気候は暖かくなり、その秋はほぼ普通の作柄になる。ブドリの家族のようになるはずだった多くの家族は、その冬を暖かい食べ物と明るい薪で楽しく過ごす。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日