けんじゅうこうえんりん
虔十公園林
- 読了時間
- 約10分
- 文字数
- 4,850字
- 読みやすさ
- やさしい
- 表記
- 新字新仮名
三行でいうと
- 縄の帯をしめていつも笑っている虔十は、子供らにばかにされて、笑わないふりをするようになる。
- ある年の春、虔十は家のうしろの野原に杉苗七百本を植えたいと頼み、父の口添えで植えることになる。
- 杉は育たずみんなに笑われるが、枝を払った林に子供らが集まり始め、隣の平二は杉を伐れと迫る。
登場人物
- 虔十
- いつも縄の帯をしめ、杜の中や畑の間を笑いながらゆっくり歩いている。
- 虔十の兄さん
- 杉の穴の掘り方を虔十に教え、苗を一本ずつ植えていく。
- 虔十のお父さん
- 今まで何一つ頼まなかった虔十のために、杉苗を買ってやれと言う。
- 平二
- 野原の北側に畑を持ち、人にいやがられるような仕事もしている。
- 博士
- 村の出身で、アメリカの大学の教授になり、十五年ぶりに故郷へ帰ってくる。
読みどころ
人にばかにされ続けた若者が植えた杉の林は、何を残したのか。物語の終わり近くで、ある人物が「全くたれがかしこくたれが賢くないかはわかりません」と口にする。この短い童話は、その問いを一本の杉林の歩みを通して描いている。
読むときは、虔十のふるまいの描き方に注目したい。うれしくて笑ってしまうのを、口を大きくあけて「はあはあ息だけ」ついてごまかす姿が何度も出てくる。雨の日に一人ずぶぬれで林の外に立つ場面も印象に残る。台詞は土地の言葉で書かれていて、家族や村人の声がそのまま聞こえてくる。後半で語り手が「お話はずんずん急ぎます。」と告げ、時間が一気に進むところも読みどころだ。
宮沢賢治の童話のなかでも短く、子供にも読みやすい一編である。作者が生前に発表しなかった作品で、亡くなったあとに世に出た。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
霧の深い朝、平二は虔十に杉を伐れとどなる。畑が日かげになるというが、杉の影は五寸も入っていなかった。虔十は「伐らなぃ。」と答える。これが虔十の一生でたった一度の、人への逆らいだった。平二は怒って虔十の頬をなぐりつけ、霧の中へ去っていく。その秋、虔十はチブスで死ぬ。平二も十日ほど前に同じ病気で死んでいた。それでも林には毎日子供らが集まった。
次の年、村に鉄道が通り、工場や家が建って、村はすっかり町になる。虔十の林だけはそのまま残った。虔十が死んで二十年近くたったころ、アメリカで教授になった博士が故郷へ帰る。小学校で話をしたあと林を訪ね、昔と変わらない様子に驚く。校長は、みんなが売れと言っても、年よりの方が虔十のただ一つのかたみだからと手放さないのだと話す。
博士は虔十を思い出し、ここに「虔十公園林」と名をつけて保存しようと言う。芝生のまん中に碑が建ち、昔の生徒たちから手紙やお金が学校に届く。虔十の家の人たちは泣いて喜ぶ。林は虔十がいたころの通り、雨が降れば短い草に雫を落とし、日が照ればさわやかな空気をはき出している。
読んでみる
青空文庫で無料で読む図書カード:虔十公園林本で読む
注や解説の付いた文庫は、言葉の意味や時代背景を確かめながら読めます。
次に読むなら
公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日