おじいさんのらんぷ
おじいさんのランプ
- 読了時間
- 約24分
- 文字数
- 11,842字
- 読みやすさ
- ふつう
- 表記
- 新字新仮名
三行でいうと
- かくれんぼで東一君が倉から古いランプを持ち出す。おじいさんは叱ったあと、昔の話を聞かせ始める。
- 日露戦争のころ、みなしごの巳之助は大野の町でランプの明るさに驚き、ランプ屋になろうと決める。
- 商売は村で広がり、巳之助は字も覚えた。だが村にも電燈を引くことが決まり、巳之助は追いつめられる。
登場人物
- 東一君
- かくれんぼで倉の隅にもぐりこみ、古いランプを持って出て来た少年。
- おじいさん
- 東一君のおじいさんで、ランプを持ち出した子供たちを叱ったあと、東一君に昔の話をする。
- 巳之助
- 岩滑新田の村のみなしごで、走り使いや子守をして村に置いてもらっていた十三の少年。
- 区長さん
- 巳之助を納屋に住ませてくれた人で、のちに毎晩巳之助に字を教えた。
- ランプ屋の主人
- 大野の町の店の主人で、巳之助の熱心さに感心し、十五銭でランプを売ってやった。
- 雑貨屋の婆さん
- 村で一軒きりの店の主で、巳之助がただで貸したランプを気に入って買った。
読みどころ
新しいものが古いものを追い越していくとき、人はどうふるまえばよいのか。この作品はその問いを、一人の少年の生涯を通して描く。ランプは貧しい少年に身を立てるきっかけを与える。同じランプが、やがて彼を苦しめるものにもなる。物語の始まりは、倉から出てきた一つの古いランプだ。
語り方は二重になっている。孫の東一君が聞き手で、おじいさんが巳之助の話を語る。巳之助が初めて大野の町に入り、店ごとにともるランプに見とれる場面は、明るさそのものが喜びとして書かれている。電燈を初めて見て、敵を睨むような顔で見つめる場面との対比にも注目したい。聞き手の東一君の姿勢が、話の途中で少しずつ変わっていくところも読みどころだ。
新美南吉は『ごん狐』や『手袋を買いに』で知られる童話作家である。舞台の岩滑新田や半田は、作者の故郷である知多半島の地名だ。この作品は、南吉が生前に出した童話集の表題作でもある。時代が変わるときの人の心を、子どもにも読める言葉で書いた一編である。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
電燈を引くと決まったあと、巳之助は村会で議長をした区長さんを怨む。春の月夜に区長さんの牛小屋へ火をつけに行くが、持ってきた火打ではうまく火がつかない。古い道具は間にあわないと口にしたことで、巳之助は自分のまちがいに気づく。ランプはもう古い道具になり、世の中が進んだのだと悟る。
巳之助は家に戻り、五十ほどのランプすべてに石油をつがせる。それを半田池のほとりの木に吊してともし、「お前たちの時世はすぎた。世の中は進んだ」と言って石を投げて割っていく。三つ目を割ったところで涙がうかび、それ以上は狙えなかった。巳之助はランプ屋をやめ、町で本屋を始める。
話を聞き終えた東一君は、巳之助がおじいさん本人だと知る。おじいさんは、やり方は少し馬鹿だったが商売のやめ方はりっぱだったと思うと語る。世の中が進んで古い商売が役に立たなくなったら、すっぱり捨てるのだと言う。東一君は「おじいさんはえらかったんだねえ」と言い、かたわらの古いランプをなつかしむように見る。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日