しんはむれっと
新ハムレット
- 読了時間
- 約3時間9分
- 文字数
- 94,216字
- 読みやすさ
- ふつう
- 表記
- 新字新仮名
三行でいうと
- 先王が急死して二箇月、叔父クローヂヤスが王位を継いで王妃と結婚する。王子ハムレットは喪服のまま式に出る。
- 学友ホレーショーが城下の噂を伝える。先王の幽霊が叔父に殺されたと訴えている話だ。同じ頃、オフィリヤの妊娠も明るみに出る。
- 侍従長ポローニヤスは噂に根拠があると言い出す。王と王妃の顔色を試すため、三人で朗読劇を演じることになる。
登場人物
- ハムレット
- 先王の子で現王の甥。二十三歳で、ウイッタンバーグの大学へ戻りたいと願うが王に止められる。
- クローヂヤス
- デンマーク国王。先王の弟で、兄の死後に王位を継ぎ、ガーツルードと結婚する。
- ガーツルード
- 王妃でハムレットの母。息子の態度を臣下の前で厳しく叱る。
- ポローニヤス
- 侍従長。娘オフィリヤの件で王に辞表を出し、のちに朗読劇を言い出す。
- オフィリヤ
- ポローニヤスの娘。ハムレットの子を身ごもっている。
- レヤチーズ
- ポローニヤスの息子。フランスへ再び遊学に発つ。
- ホレーショー
- ハムレットの学友。王の手紙でウイッタンバーグから呼ばれて来る。
読みどころ
沙翁の『ハムレット』から人物と舞台だけを借りて、ある家庭の三日間を描いた作品である。作者ははしがきで、この作品を心理の実験と呼んでいる。先王の死をめぐる噂は本当なのか。疑う側も疑われる側も長い言葉で自分を語り、その言葉がまた次の疑いを呼ぶ。王はハムレットに「人生は、芝居ではないのです。」と言うが、登場人物はみな芝居のように語ってしまう。
物語はほとんど会話だけで進む。ポローニヤスがレヤチーズに遊学の心得を延々と説く場面には、笑いと父親の寂しさが同居している。オフィリヤが王妃の前でハムレットの欠点を次々に並べ、それでも好きだと言う場面も読みどころだ。朗読劇の台本はロセチの詩を作者が潤色したもので、劇の中の台詞と人物の本心が重なっていく。大人たちの言い分と若い者の言い分が、どちらも正しく聞こえる組み立てになっている。
太宰治はこの作品を四箇月かけて書き上げ、昭和十六年に文藝春秋社から刊行した。作者は戯曲ではなく、読むための劇のような小説だと断っている。原作の大きな悲劇と比べて、みずから「かすかな室内楽に過ぎない」と書いた。原作を知っている人は、どこを変えたかを比べながら読むと面白い。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
朗読劇の席で、王妃は怒って立ち去ろうとし、王は笑って褒める。その夜、王はポローニヤスを居間に呼んで問い詰める。言い争いの末に、ポローニヤスは二箇月前の先王の死の日に見たものがあると言い出す。王は短剣で彼を刺し、そこへガーツルードが姿を見せる。
翌朝、ハムレットは大広間でオフィリヤと愛と言葉について言い争う。そこへ王が来て、レヤチーズの船がノーウエーの軍艦に沈められたと告げ、開戦を決める。ポローニヤスは不忠の臣で城にいないと言う王を、ハムレットは疑う。王は、噂は事実だが毒殺はしていないと答える。決意した一夜があっただけで、先王は病気で死んだと言う。ハムレットは短剣を抜き、自分の左の頬を切り裂く。
そこへホレーショーが駆けつけ、王妃が庭園の小川に身を投げたと知らせる。王妃は喪服を着て、小さい銀の十字架を握っていた。王は自分は死なず、国の名誉のために戦うと言う。ハムレットは「信じられない。僕の疑惑は、僕が死ぬまで持ちつづける。」と答え、物語は終わる。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日