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びんづめじごく

瓶詰地獄

夢野久作

読了時間
約14分
文字数
6,671字
読みやすさ
歯ごたえあり
表記
新字新仮名
読む速さ

初出: 「猟奇」1928(昭和3)年10月

三行でいうと

  1. 南の島の村役場が、浜に流れ着いた三本のビール瓶を封をしたまま海洋研究所へ送る。中身は雑記帳の切れ端らしい。
  2. 一本目の手紙では、救いの船が来た日に兄妹が抱き合って崖から身を投げると、両親に別れを告げている。
  3. 二本目には兄の太郎が、妹のアヤ子と島で暮らした年月と、美しく育つ妹への思いに苦しむさまを書きつける。

登場人物

太郎
二本目の手紙の書き手で、船の事故で島に流れ着いたとき十一歳だった兄。
アヤ子
太郎の妹で、島に流れ着いたときは七つになったばかりだった。

読みどころ

三本の瓶に入った手紙から、離れ島に流れ着いた幼い兄妹の年月が浮かび上がる。誰もいない楽園で二人は何に苦しむようになったのか。読者は三枚の紙切れだけを手がかりに、二人に起きたことを組み立てることになる。

語り口の変わり方に注目したい。冒頭は村役場の堅い候文で、手紙はていねいな「ですます」で書かれ、聖書の言葉が多く混じる。太郎が「この美しい、楽しい島はもうスッカリ地獄です」と書くとおり、島の豊かさがそのまま苦しみになっていく。役場の手紙にある、漂着の時日は記入できないという断りも読み流さずにおきたい。

夢野久作は『ドグラ・マグラ』で知られる探偵小説の作家である。本作は1928年に雑誌『猟奇』に発表された。短い作品なので、読み終えたらもう一度最初から読み返したくなる。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

アヤ子に、どちらかが死んだらあとはどうしたらいいかと聞かれた太郎は、崖の上で神に祈る。神は何も示さない。太郎は救いの目印に立てていた棒を淵へ投げ込み、小舎で聖書を火にくべる。アヤ子の名を呼んで浜へ出ると、アヤ子は潮の満ちてくる岬の大磐で祈っていた。その決心を悟った太郎は、暴れるアヤ子を抱きかかえて連れ帰る。小舎は聖書や枯れ草と一緒に焼け落ちていた。

それから二人は同じ処で寝ることもできなくなる。島の美しさのすべてがアヤ子の姿と混じり合い、太郎を責め立てる。鉛筆が尽きかけるなか、太郎は二人の体がまだ清浄でいるうちに、この手紙を瓶に封じて海に流すと書いて筆を置く。

三本目の瓶には、カタカナだけの短い手紙が入っていた。兄妹は仲よく達者に暮らしているので、早く助けに来てほしいと両親に頼む文面で、市川太郎とイチカワアヤコの名が並ぶ。二本目で触れられた、二人が初めに海へ流した手紙と読める内容で、物語はここで終わる。

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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日