からすのほくとしちせい
烏の北斗七星
- 読了時間
- 約10分
- 文字数
- 4,746字
- 読みやすさ
- やさしい
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社、1924(大正13)年12月1日
三行でいうと
- 雲の垂れこめた雪の田んぼで、烏の義勇艦隊が年老いた大監督の号令を受けて夕方の演習に飛び立つ。
- 演習のあと、烏の大尉は許嫁のもとへ行く。あした山烏を追いに行くので、しばらく別れると告げる。
- 眠れない夜に大尉はマジエルの星に祈る。明け方、北の峠の栗の木に敵の山烏がとまっているのを見つける。
登場人物
- 烏の大尉
- 烏の義勇艦隊の若い艦隊長で、十八隻の部下を率いている。
- 烏の大監督
- ずいぶん年老いた烏で、長いあいだ空で号令してきたために声が錆びている。
- 砲艦の烏
- 艦隊でいちばん声のいい砲艦で、烏の大尉の許嫁である。
- 烏の兵曹長
- 大尉の部下で、点呼の時間を知らせに来る。
- 山烏
- 大尉たちが追い払いに行く相手で、艦隊からは敵とされている。
読みどころ
烏の群れを軍艦の艦隊に見立てた童話である。鳴き声は大砲の音になり、烏たちは巡洋艦や砲艦や駆逐艦と呼ばれる。勇ましい演習の話のように始まるが、話の中心にあるのは戦う者の迷いだ。大尉は、勝つのが自分と山烏のどちらであるべきかを自分では決められない。そのため星に向かって祈る。
注目したいのは夜の場面である。空が割れて長い腕が烏をつかみに来るさまが描かれたあと、語り手は「いや、ちがいました。」と言って自分の書いたことを打ち消す。そのあとに続くのが、許嫁の見る二つの夢と、枝の向こうでそれを聴いている大尉の祈りである。眠れない二羽の夜が重なって描かれる。
宮沢賢治が1924年に出した童話集『注文の多い料理店』に収められた一編である。烏たちはマジエル様と呼ぶ北斗七星を仰ぎ、祈りを向ける。題名はこの星から来ている。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
大尉は部下を呼び集め、先頭に立って北へ突っ込む。山烏は逃げようとするが、駆逐艦たちにまわりを囲まれる。大尉と兵曹長に頭を突かれた山烏は、峠の雪の上に落ちて動かなくなる。味方に死者はなく、兵曹長が死骸を営舎へ持ち帰る。
朝の観兵式で大尉が戦果を報告すると、大監督は涙を流して少佐に取り立てる。新しい少佐は、腹を空かせて山から出てきたところを殺された山烏を思い出して泣く。敵の死骸を葬らせてほしいと願い出ると、大監督は「よろしい。厚く葬ってやれ。」と答える。
少佐は列に戻ってマジエルの星のあたりを仰ぎ、憎むことのできない敵を殺さずに済む世界が早く来るように祈る。そのためなら自分の体は何度引き裂かれてもかまわないと願う。列の中では、許嫁の砲艦がずっと涙をこぼしている。あしたからまた大尉と演習ができるのがうれしいからで、砲艦長は見ないふりをしている。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日