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のばら

野ばら

小川未明

読了時間
約5分
文字数
2,304字
読みやすさ
やさしい
表記
新字新仮名
読む速さ

三行でいうと

  1. 大きな国と小さな国の国境で、老いた兵士と若い兵士が一人ずつ石碑の番をしている。
  2. 話し相手のいない二人はやがて仲よくなり、野ばらのそばで毎日将棋を差すようになる。
  3. 冬を越して春が来たころ、二つの国が戦争を始め、仲のよい二人は敵と味方に分かれる。

登場人物

老人
大きな国の兵士で、身分は少佐だ。南の方にせがれや孫が住んでいる。
青年
小さな国の兵士で、老人に将棋を教わり、やがて老人を負かすほど強くなる。
旅人
戦争が始まった後に国境を通りかかる人で、老人に戦争の様子を聞かれる。

読みどころ

敵と味方は誰が決めるのか。国境で暮らす二人の兵士は、ある日から国の都合で敵どうしにされる。毎日顔を合わせてきた二人には、それが不思議に思われる。短い童話のなかに、国どうしの争いと人どうしの情の食い違いが描かれている。

前半は春の国境ののどかな暮らしが続く。二人はみつばちの羽音で目を覚まし、清水で顔を洗い、昼には将棋を差す。駒を落として差していた老人が、しまいには青年に負かされるようになる。そこに二人が過ごした月日が見える。将棋の最中に老人が笑って言う「ほんとうの戦争だったら、どんなだかしれん。」という冗談は、読み終えてから思い返したい。国境に咲く一株の野ばらが、季節とともにどうなるかにも気をつけて読むとよい。

小川未明は、大正から昭和にかけて多くの童話を書いた作家だ。この作品もですます調のやわらかな語り口で、子どもでも読める。大人が読むと、二人を引き離した戦争の理由が「利益問題」としか書かれていないことが目に残る。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

戦争が始まると、老人は青年に自分を殺すように言う。少佐である自分の首を持ってゆけば、青年は出世できるからだ。青年はあきれた顔で断り、「私の敵は、ほかになければなりません。」と言う。そして戦争が開かれている北の方へ去っていく。

国境には老人だけが残る。戦争は遠くで続いていて、鉄砲の音も煙も届かない。老人は青年の身の上を案じて日を送る。ある日、通りかかった旅人が、小さな国が負けて兵士はみなごろしになったと告げる。

老人は石碑の礎に腰かけたまま居眠りをする。声ひとつ立てない軍隊が近づいてきて、馬に乗って指揮しているのはあの青年だった。青年は老人の前で黙礼をし、ばらの花をかいで通り過ぎる。老人がものを言おうとしたところで目がさめ、それは夢だったと分かる。一月ほどして野ばらは枯れ、その年の秋、老人は暇をもらって南の方へ帰る。

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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日