とおのものがたり
遠野物語
- 読了時間
- 約1時間16分
- 文字数
- 37,543字
- 読みやすさ
- 歯ごたえあり
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「遠野物語」柳田國男、1910(明治43)年6月14日
三行でいうと
- 柳田國男が遠野の人佐々木鏡石から聞いた話を、一字一句加減せずに書き留めた百十九の話である。
- 山に住む山男や山女、神隠しにあった娘、旧家に宿るザシキワラシなど、村の人が見聞きした話が続く。
- 川童の子を産む家や、死の間際に寺を訪ねる病人など、話は生と死の境へ少しずつ近づいていく。
登場人物
- 佐々木鏡石
- 遠野の人で、明治四十二年の二月ごろから柳田のもとを訪ね、この書の話をすべて語った。
- 佐々木嘉兵衛
- 栃内村和野の猟師で、若いころ山奥の岩の上で長い黒髪の女を撃つなど、山で何度も不思議に遭う。
- 山口孫左衛門
- 山口の旧家で、童女の神が二人いると言い伝えられた家だが、ある年に主従が茸の毒で死に絶える。
- 乙爺
- 新田乙蔵という老人で、遠野郷の昔の話をよく知るが、明治四十二年の夏の始めに亡くなった。
- おひで
- 山口の大同の養母で、八十を超えても達者であり、オシラサマの由来を佐々木氏に語った。
- 福二
- 北川清の弟で、海岸の田の浜へ婿に行き、大海嘯で妻と子を失った。
読みどころ
山の奥に住む大男や女、旧家に宿る童子の神、死の間際に人を訪ねてくる者。遠野の人々が見聞きした不思議が、短い話として次々に語られる。序文で柳田は、これを昔話ではなく目の前の出来事として扱い「要するにこの書は現在の事実なり」と書いた。どの話にも村の名や家の名、何年前のことかが添えられている。
文語体で書かれているが、一話は短く、数行で終わる話も多い。冒頭の題目には話の番号が分類ごとに並んでいるので、気になる項目から拾い読みしてもよい。話の後ろに○を付けた短い注にも目を向けたい。柳田はそこでアイヌ語の地名を考えたり、ほかの国の似た話を挙げたりしている。序文に描かれた盆の遠野の夕暮れも、本文への入り口として読みたい。
柳田國男は日本の民俗学を開いた人として知られる。『遠野物語』は明治四十三年に刊行された。聞いたことを加減せずに書くという姿勢が貫かれており、のちの民俗学の出発点の一つとされる。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
後半は死者にまつわる話が重なる。大病で死にかけた人が寺を訪ねて茶を飲んでいく。小僧に後を追わせると門の外で姿が消え、茶は畳の間にこぼしてあった。福二は霧の夜の渚で、海嘯で亡くした妻に出会う。妻は同じく海嘯で死んだ男と連れ立っていた。今はこの人と夫婦になっていると妻は言う。子供は可愛くないのかと問うと、妻は顔色を変えて泣いた。福二はその後長く煩った。
続いて小正月の行事や雨風祭、夜中に火を噛み消したゴンゲサマの話が並ぶ。ダンノハナと蓮台野という地名からは、六十を超えた老人を蓮台野へ追いやった昔の習わしが語られる。老人たちは日中は里へ下りて農作をした。そのため今も朝に野へ出ることをハカダチと呼ぶ。
最後は昔々と呼ばれる御伽話である。ヤマハハに追われた娘が、同じくさらわれてきた女と力を合わせてヤマハハを殺す話などが記される。本は、獅子踊に古くから使われてきた歌の詞を載せて閉じる。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日