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わがはいはねこである

吾輩は猫である

夏目漱石

読了時間
約10時間37分
文字数
318,354字
読みやすさ
歯ごたえあり
表記
新字新仮名
読む速さ

初出: 「ホトトギス」1905(明治38)年1月、2月、4月、6月、7月、10月、1906(明治39)年1月、3月、4月、8月

三行でいうと

  1. 名前のない猫が英語教師の苦沙弥の家に住みつき、主人や家族、訪ねてくる友人たちを猫の目で眺める。
  2. 実業家の金田の妻が、娘の縁談のために寒月の人柄を探りに来る。主人は腹を立て、金田家との対立が始まる。
  3. 隣の落雲館の生徒が庭へ球を打ち込み、主人は怒り続ける。友人たちは集まっては文明や結婚を論じ合う。

登場人物

吾輩
教師の家に住みついた名前のない猫で、物語の語り手。
苦沙弥
吾輩の主人で、英語のリードルを教える胃弱の教師。何にでも手を出すが長続きしない。
迷亭
主人の友人の美学者で、出鱈目を言って人を担ぐのを楽しみにしている。
水島寒月
主人の元教え子の理学士。博士論文のために学校で硝子の珠を磨き続ける。
越智東風
寒月の友人で、朗読会を開き新体詩を作る青年。
鼻子
向う横丁に住む実業家金田の妻。大きな鼻から吾輩がこう呼ぶ。
金田富子
金田家の令嬢で、寒月の縁談の相手と噂される。
八木独仙
主人の旧友で、心を修養して満足を得よと説く山羊髯の男。
多々良三平
主人の家の元書生で、今は会社勤め。猫は旨いと言う。
三毛子
二絃琴の師匠の家の猫で、吾輩を先生と呼ぶ。

読みどころ

「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」で始まるこの小説は、人間の暮らしを猫が外から眺めて語る。主人の苦沙弥は胃弱で強情で、絵も俳句も続かない。迷亭は法螺を吹き、寒月は珠を磨き、東風は詩を捧げる。猫は彼らを太平の逸民と呼び、偉そうにしている人間のおかしさを書き留めていく。

読むときは、話の筋よりも座敷でのやりとりを楽しむとよい。トチメンボーの一件や首縊りの力学の演説など、迷亭や寒月の長い話が次々に出てくる。猫が雑煮の餅を噛んで踊る場面や、金田邸へ忍び込む場面もある。漢語と古典の引用が多く、一文が長い。一度に読み切らず、章ごとに区切って読むと進めやすい。

夏目漱石の最初の小説で、雑誌『ホトトギス』に連載された。章ごとにほぼ独立した話が並び、後半になるほど文明や個人、結婚をめぐる議論が増えていく。笑える話の中に、人間の暮らしへの皮肉な目が通っている。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

秋のある日、主人の家に迷亭、独仙、寒月、東風が集まる。国から戻った寒月は、郷里ですでに妻を迎えたと明かす。もう博士にはならなくてよいと言い、金田家との縁談は立ち消えになる。そこへ多々良三平がビールを提げて現れる。三平は自分が金田の令嬢を貰うことになったと告げ、一同はコップを挙げて祝う。

客が帰った夜、吾輩は台所に残ったビールを飲んでみる。体が暖かくなり、陽気になってふらふらと歩くうちに、水甕の中へ落ちてしまう。爪で甕の縁を掻いても届かず、もがくほど沈む。

出られないと悟った吾輩は、抵抗するのをやめて自然の力に任せる。次第に楽になり、吾輩は死んでその太平を得る。物語は「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい。」の一文で終わる。

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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日