こんじきやしゃ
金色夜叉
- 読了時間
- 約8時間22分
- 文字数
- 250,586字
- 読みやすさ
- 歯ごたえあり
- 表記
- 新字旧仮名
初出: 「読売新聞」1897(明治30)年1月1日~1902(明治35)年5月11日
三行でいうと
- 明治の東京で、孤児の間貫一は恩人の鴫沢家に養われ、一人娘の宮と夫婦になる約束をしていた。
- かるた会で金剛石の指環を光らせた富山唯継が宮を望み、宮はその縁談を受け入れてしまう。
- 熱海で宮と別れた貫一は姿を消し、数年後には高利貸の手代として容赦なく金を取り立てていた。
登場人物
- 間貫一
- 十五歳で父を亡くし、鴫沢家に引き取られて育った高等中学の学生。
- 宮
- 鴫沢隆三の一人娘で、貫一の許嫁。
- 富山唯継
- 下谷の富山銀行を持つ家の跡取りで、宮を嫁に望む資産家。
- 鴫沢隆三
- 貫一の父に恩があり、孤児になった貫一を引き取った宮の父。
- 荒尾譲介
- 貫一が兄のように慕った高等中学の同窓生。
- 赤樫満枝
- 高利貸の赤樫の妻で、自分でも金を貸し、貫一に思いを寄せる。
- 鰐淵直行
- 学業を捨てた貫一を手代として使う高利貸。
読みどころ
金で愛は買えるのか。貫一は宮が富に心を移したことを許せず、その恨みを抱えて自分も金を取り立てる側へ回る。一方の宮は、裕福な暮らしを手に入れたあとで、本当に欲しかったものを捨てたと気づく。どちらも自分の選んだ道に苦しみ続ける。読者は、一度の過ちが二人の人生をどこまで縛るのかを最後まで見届けることになる。
まず読みたいのは熱海の浜の別れの場面である。貫一は「一月の十七日、宮さん、善く覚えてお置き。」と言い、翌年のこの夜も月を涙で曇らせてみせると誓う。後半では、満枝の誘いに「高利貸の目には涙は無いですよ」と答える貫一と、優しかった学生時代の貫一との落差に注目したい。地の文は漢語の多い文語体だが、会話は明治の東京の話し言葉で書かれている。会話から人物の気持ちを追っていくと、長い物語にも入りやすい。
尾崎紅葉の代表作で、『読売新聞』に連載された。作者が亡くなったため未完のまま終わり、宮と貫一の結末は書かれていない。それでも熱海の別れの場面は芝居や歌に取り上げられ、多くの人に知られている。前編、中編、後編、続、続続、新続と巻を重ねるうちに、二人だけでなく、高利貸に追われる人々や周りの人物の暮らしにも筆が及んでいく。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
一月十七日の夜、熱海の浜で貫一は宮に思い直すよう迫る。宮が答えないので、貫一は宮を蹴り倒して去る。宮は富山に嫁いで男の子を生むが、その子は肺炎で亡くなる。貫一は鰐淵の手代になり、言い寄る満枝をはねつけ、旧友の借金も冷たく取り立てる。やがて夜道で闇討ちにあって入院する。見舞いに来た鴫沢隆三にも会おうとしない。退院の前に、息子を牢に送られて正気を失った母親が鰐淵家に火をつけ、鰐淵夫婦は焼け死ぬ。跡取りの直道は家業をやめてほしいと頼むが、貫一は受け入れない。
宮は前の行いを悔い、偶然出会った荒尾に取りなしを頼むが断られる。その後は貫一に何通も手紙を送るが、貫一は封を切らずに焼き捨てる。荒尾も貫一を訪ねて高利貸をやめるよう説くが、聞き入れられない。荒尾は恩人の借金の連帯人になって困窮していた。宮は貫一の家まで訪ねてくるが、貫一は会おうとしない。その後、宮が自害して貫一も後を追おうとする夢を見て、貫一は苦しむ。
仕事で塩原の温泉宿に来た貫一は、心中しようとしていた狭山とお静の二人を止める。お静を身請けしようとしていた客が富山だったと知り、貫一は二人の借金を引き受けて自分の家に住まわせる。やがて貫一は、病に伏した宮から届いた長い手紙を初めて開いて読む。宮は貫一を思って死ぬと書き、死ぬ前にもう一度会いたいと願っている。物語は宮の手紙の途中で終わり、二人が再び会うところまでは描かれていない。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日