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さぶ

さぶ

山本周五郎

読了時間
約7時間
文字数
209,557字
読みやすさ
歯ごたえあり
表記
新字新仮名
読む速さ

初出: 「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

三行でいうと

  1. 栄二とさぶは小舟町の表具屋芳古堂で育った職人仲間で、ぐずと言われるさぶは栄二を頼りにしている。
  2. 二十三の冬、栄二は得意先の両替商綿文で金襴の切を盗んだ疑いをかけられ、店を追われる。
  3. 石川島の人足寄場へ送られた栄二は世間を憎み続けるが、寄場の仲間と暮らすうちに少しずつ変わっていく。

登場人物

さぶ
芳古堂の職人で、糊の仕込みを受け持つ。自分のことを生まれつきのぐずだと言う。
栄二
さぶと同い年の芳古堂の職人で、腕がいい。綿文で金襴の切を盗んだ疑いをかけられる。
おすえ
綿文の中働きの娘で、栄二が昔から思いを寄せている。
おのぶ
堀江町の小料理屋すみよしで働く女。十五の栄二とさぶに傘を差し出した少女だった。
芳兵衛
小舟町の表具と経師の店、芳古堂の主人。
和助
芳古堂の元職人がしらで、浅草東仲町に香和堂という店を持った。
岡安喜兵衛
人足寄場で役所詰元締役を務める同心。
与平
寄場のもっこ部屋にいる人足で、女房を殺しそこなって送られてきた。
清七
寄場の油絞りの人足で、こぶと呼ばれる力持ち。
松田権蔵
寄場の差配で、人足たちから赤鬼と呼ばれている。

読みどころ

題名は『さぶ』だが、物語のほとんどは栄二の目を通して進む。無実の罪ですべてを失った男が、人を憎む心からどう抜け出すのかが話の中心にある。その間ずっと黙って栄二を支え続けるさぶの姿は、読み進めるほど重みを増していく。

注目したいのは、石川島の人足寄場の場面である。女房を殺しそこなった与平や、女に振り回される力持ちの清七が一人ずつ描かれる。口は悪いが情の深い差配の松田権蔵も忘れがたい。栄二がこうした人々をどう見るようになるかで、本人の変わり方が分かるように書かれている。さぶの口癖である「おら、思うんだが」にも気をつけて読みたい。

山本周五郎は江戸の町に生きる人々を描いた作家で、『赤ひげ診療譚』や『樅ノ木は残った』などで知られる。『さぶ』は1963年に『週刊朝日』で連載された長編である。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

寄場に来てしばらく、栄二は誰とも口をきかずに過ごす。大あらしの夜、清七と二人で逃げ出そうとする人足たちを止め、島を守る側に回る。その後、崩れた石垣の下敷きになって脛の骨を折り、仲間たちに掘り出される。看病を続ける与平や杖を作ってくれた清七に囲まれて、栄二の心は少しずつ開いていく。やがて賭博でもっこ部屋を荒らした義一とりゅうを、一人で打ち据える。栄二は町奉行所へ戻されるが、寄場の人足たちの嘆願もあって放免される。

おすえと祝言をあげた栄二は、さぶと二人で坂本町に小さな店を開く。けれども仕事は少なく、おすえは賃仕事、さぶは日稼ぎで暮らしを支える。栄二はおのぶの店で、江ノ島の料理屋から大きな注文を受ける。同じころ、さぶは母の病で葛西へ帰っていた。出立を決めた夜、栄二が糊の瓶を開けると、蓋の裏にさぶの字で、切の件は自分の罪だと書いてあった。

さぶを疑う栄二に、おすえは切を道具袋に入れたのは自分だと打ち明ける。綿文の娘たちに栄二を取られたくなかったのだという。栄二はおすえを赦し、寄場での日々は世間での十年よりためになったと語る。そこへ葛西から戻ったさぶが雨戸の外で「いるかい、栄ちゃん、いま帰ったよ」と呼びかける。

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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日