くものいと
蜘蛛の糸
- 読了時間
- 約6分
- 文字数
- 2,868字
- 読みやすさ
- やさしい
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「赤い鳥」1918(大正7)年7月
三行でいうと
- 御釈迦様は極楽の蓮池のふちから、池の下に透けて見える地獄の底をのぞき、大泥坊の犍陀多に目を止める。
- 犍陀多は昔、小さな蜘蛛を殺さずに助けた。御釈迦様はその報いに、極楽の蜘蛛の糸を地獄の底へ下ろす。
- 犍陀多は糸をつかんでのぼり始める。ひと休みして下を見ると、数限りない罪人が後からよじのぼって来る。
登場人物
- 御釈迦様
- 極楽の蓮池のふちを歩くうちに地獄の底の犍陀多を見つけ、蜘蛛の糸を下ろしてやる。
- 犍陀多
- 人を殺したり家に火をつけたりした大泥坊で、林の中で蜘蛛を踏み殺さずに助けたことがある。
読みどころ
地獄に落ちた大泥坊にも、一度だけ善い行いがあった。その一つの善行に、極楽から細い糸が垂れてくる。救いの手を差し伸べられた人間がどう振る舞うのかを、短い話の中で問いかける作品である。
語りは「ございます」で終わる、やわらかな話し言葉で進む。白い蓮と金色の蕊が匂う極楽の朝と、まっ暗で静まり返った血の池が、交互に描かれる。糸の途中で犍陀多が下を見下ろし、「しめた。しめた。」と笑う場面から、話は一気に動く。のぼって来る罪人たちを見た犍陀多が、何を考えて何をするかに注目したい。
芥川龍之介が初めて書いた童話である。児童雑誌『赤い鳥』の創刊号に載り、今も教科書や絵本で読み継がれている。子どもにも大人にも、一息で読める短さだ。読み終えてから冒頭の極楽の描写に戻ると、印象が変わって見える。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
罪人たちが何百、何千とのぼって来るのを見て、犍陀多は糸が人数の重みで切れることを恐れる。そこで大声を出し、糸は自分のものだと言って、罪人たちに下りろと喚く。
その途端、今まで何ともなかった糸が、犍陀多のぶら下がっている所からぷつりと切れる。犍陀多は独楽のようにまわりながら、暗の底へまっさかさまに落ちる。あとには短く垂れた蜘蛛の糸が、空の中途で光っているだけである。
御釈迦様は一部始終を見ていた。犍陀多が血の池の底へ沈むと、悲しそうな顔でまた歩き始める。自分だけ地獄から抜け出そうとした無慈悲な心が、相応の罰を受けたのを、浅ましく思ったのだろうと語り手は書く。極楽の蓮はそんな事には頓着せず、白い花を揺らし、好い匂を漂わせている。極楽はもう昼に近い。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日