ゆきわたり
雪渡り
- 読了時間
- 約13分
- 文字数
- 6,393字
- 読みやすさ
- やさしい
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「愛国婦人」1921(大正10)年12月号、1922(大正11)年1月号
三行でいうと
- 雪が堅く凍った日、四郎と妹のかん子は雪沓をはき、いつもは歩けない野原を森の近くまで渡っていく。
- 森へ向けた囃し歌に応えて白い子狐の紺三郎が現れ、狐が人をだますというのは偽だと二人に話す。
- 紺三郎に月夜の幻燈会へ招かれた二人は、兄さんたちに見送られて狐の学校生徒が集まる林へ向かう。
登場人物
- 四郎
- かん子の兄で、狐の子が出てきたときはかん子をうしろにかばう。
- かん子
- 四郎の妹で、四郎のうしろにかくれたまま狐の子に歌いかける。
- 紺三郎
- 白い狐の子で、二人を狐小学校の幻燈会に招く。
- 二郎
- 四郎たちの二番目の兄さんで、幻燈会に行けないと知って鏡餅を持たせる。
読みどころ
狐は人をだますのか。この作品は、その問いを狐の側から見つめ直す。子狐の紺三郎は、だまされたという人は酒に酔った人や臆病な人だと言い、狐の悪い評判を晴らそうとする。人の子と狐の子が互いを信じられるかどうかが、物語の芯にある。
耳で楽しめる作品でもある。「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。」の囃し言葉と、キックキックトントンの足ぶみが何度も繰り返される。子どもと子狐の掛け合いの歌は、初めは相手をからかう文句で始まる。やがて三人は一緒に踊りだす。燕尾服を着た紺三郎が開会の辞を述べる場面では、小さな狐の大人びたふるまいに注目したい。凍った雪が鏡のように光る野原や、月の光が差しこむ林の描き方も美しい。
宮沢賢治の童話のなかでも、雪国の冬の遊びと方言の響きがよく出た一編である。狐が人をだます昔話を下敷きにして、人と狐が約束を交わす話に仕立てている。雑誌『愛国婦人』に掲載された作品である。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
幻燈会では、酒に酔った太右衛門と清作が野原で変なものを食べている写真がうつる。休みになると、狐の女の子が黍団子を二皿持ってくる。四郎はたった今その写真を見たばかりで困ってしまい、かん子は皿を持ったまま赤くなる。狐の生徒たちはこちらを見て、食べるかどうかをひそひそ話している。
四郎は「僕は紺三郎さんが僕らを欺すなんて思わないよ。」と決心し、二人は団子を残さず食べる。団子はとてもおいしく、狐の生徒たちは喜んで踊りあがり、うそを言わない、盗まない、そねまないと歌う。四郎もかん子も嬉しくて涙をこぼす。わなと火の絵のあと、紺三郎は閉会の辞を述べる。狐のこしらえたものを酔っていない人間の子どもが食べてくれたことを心に留め、狐の悪い評判を無くしてほしいと生徒たちに話し、生徒たちは感動して涙をこぼす。
紺三郎は二人に「今夜のご恩は決して忘れません。」とおじぎをする。帰り道、狐の生徒たちが追いかけてきて、どんぐりや栗、青く光る石を二人のふところに入れて逃げていく。森を出た二人は、雪の野原のまん中で、迎えに来た兄さんたちの三つの黒い影を見る。
読んでみる
青空文庫で無料で読む図書カード:雪渡り本で読む
注や解説の付いた文庫は、言葉の意味や時代背景を確かめながら読めます。
次に読むなら
公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日