おつべるとぞう
オツベルと象
- 読了時間
- 約12分
- 文字数
- 5,645字
- 読みやすさ
- やさしい
- 表記
- 新字新仮名
三行でいうと
- 稲扱器械を六台も据えつけて百姓を働かせるオツベルの小屋に、ある日ふらりと白象がやって来る。
- オツベルは白象を引きとめて自分のものにし、時計や靴を与えるふりで重い鎖と分銅を付けさせる。
- 税金を口実に水汲みや薪運びをさせられ、藁も減らされるなかで、象は少しずつ笑わなくなっていく。
登場人物
- オツベル
- 稲扱器械を六台も据えた小屋の主人で、百姓たちを使い、大きな琥珀のパイプをくわえて歩き回る。
- 白象
- 小屋にやって来た白い象で、オツベルのもとにとどまり、言われるままに働く。
- 百姓ども
- オツベルの小屋で器械を足で踏んで回し、稲を扱いている十六人の百姓である。
- 月
- 象小屋の象が毎晩見上げる月で、弱った象に仲間へ手紙を書くよう勧める。
- 赤衣の童子
- 赤い着物を着た子どもで、象に硯と紙を差し出し、書いた手紙を山まで届ける。
- 山の象ども
- 沙羅樹の下で碁を打っていた象たちで、手紙を読んでオツベルの邸へ駆けつける。
読みどころ
働き者の白象と、象を思うままに使うオツベルの話である。象は時計や靴を受け取るたびに「なかなかいいね。」と喜び、言われた仕事を楽しそうにこなす。読み手は、象が疑わずにいるあいだに何を背負わされているかに気づく。素直さと搾取がどう向き合い、どこへ行き着くのかが、この童話の中心にある。
語り手は名前の出てこない牛飼いで、話は第一日曜、第二日曜、第五日曜の三つに分かれる。各章は「オツベルときたら大したもんだ。」のように、オツベルをほめる口調で始まる。ほめ言葉と書かれている出来事のずれに注目したい。もう一つの見どころは、夜ごとに象が月を見てつぶやく言葉の移り変わりである。「ああ、稼ぐのは愉快だねえ、さっぱりするねえ」から始まって、サンタマリアと呼びかける声が少しずつ変わっていく。「グララアガア」のような擬音や、器械の「のんのんのんのん」も声に出して読むと楽しい。
宮沢賢治の童話のなかでも、短く読みやすい一編である。1926年に雑誌『月曜』に発表された。動物の口を借りて働くことと取り立てることを描いた作品として、教科書でも広く読まれてきた。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
第五日曜の話で、語り手の牛飼いはオツベルが居なくなったと切り出す。オツベルの仕打ちはだんだんひどくなり、象は「苦しいです。サンタマリア。」と月に向かって言う。それを聞いたオツベルはさらに象につらく当たる。ある晩、象は倒れて藁も食べず、月に別れを告げる。月は仲間へ手紙を書くよう言い、赤い着物の童子が硯と紙を差し出す。象は「ぼくはずいぶん眼にあっている。みんなで出て来て助けてくれ。」と書き、童子がそれを山へ届ける。
手紙を読んだ山の象たちは吠えだし、嵐のように野原を走ってオツベルの邸へ押し寄せる。昼寝から覚めたオツベルは象小屋の戸を閉めさせ、丸太で白象を閉じこめ、門にもかんぬきをかけさせる。百姓たちは巻き添えを嫌い、降参のしるしに白い布を腕に巻く。象たちはセメントの塀を壊せず、仲間のからだを台にして塀を越えにかかる。オツベルは六連発のピストルを撃つが、弾は象にはね返される。やがて五匹の象が塀から一度に落ちてきて、オツベルはつぶれてしまう。
門が開き、象たちは小屋に押し寄せて丸太をへし折る。白象はひどく痩せて小屋を出てくる。仲間たちは静かにそばへ寄り、鎖と分銅を外してやる。白象は「ああ、ありがとう。ほんとにぼくは助かったよ。」と、さびしく笑って言う。話はそこで終わり、最後に語り手が聞き手に向かって、川へ入ってはいけないと呼びかける。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日