せろひきのごーしゅ
セロ弾きのゴーシュ
- 読了時間
- 約24分
- 文字数
- 11,632字
- 読みやすさ
- やさしい
- 表記
- 新字新仮名
三行でいうと
- 町の活動写真館でセロを弾くゴーシュは、楽団でいちばん下手で、いつも楽長に叱られている。
- 音楽会まであと十日。水車小屋で夜通し練習するゴーシュのもとへ、三毛猫がトマトを持って訪ねてくる。
- 次の晩からはかっこう、狸の子、野ねずみの親子が来て、それぞれの頼みごとをゴーシュにする。
登場人物
- ゴーシュ
- 町の活動写真館でセロを弾く係りで、仲間の楽手のなかではいちばん下手である。
- 楽長
- 金星音楽団を率いており、練習ではゴーシュの演奏を何度も止めて叱る。
- 三毛猫
- ゴーシュの畑の半分熟したトマトを持って来て、シューマンのトロメライを弾くよう求める。
- かっこう
- ドレミファを正確に習いたいと言って、天井の穴から降りてくる。
- 狸の子
- 楽隊で小太鼓の係りをしていて、セロに合わせてもらうよう父親に言われて来る。
- 野ねずみ
- 具合の悪い子どもを連れて来て、治してほしいとゴーシュに頼む。
読みどころ
ゴーシュは下手だと叱られてばかりいるセロ弾きである。音楽会を前に、夜ごと水車小屋で練習を重ねる。そこへ動物たちが一匹ずつ訪ねてくる。ゴーシュは乱暴な口をきいて追い返そうとするが、頼まれると結局弾いてしまう。この夜の繰り返しがゴーシュに何をもたらすのかが、読みどころの中心にある。
注目したいのは、動物たちがそれぞれ音楽について言うことだ。かっこうは「わたしらのなかまならかっこうと一万云えば一万みんなちがうんです。」と言い張る。狸の子は棒きれで拍子をとりながら、ゴーシュの音のずれに気づく。ごうごうと響くセロの音やかっこうの鳴き声など、繰り返される音の書き方も楽しい。
宮沢賢治の童話で、作者の没後に発表された。動物と人とのやりとりを、笑いを交えて描く賢治らしい一編である。短い作品なので、子どもと一緒に読むのにも向いている。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
ゴーシュは猫の前で「印度の虎狩」を激しく弾いて懲らしめ、外へ追い出す。かっこうとは夜明けまで弾いたあと怒鳴りつける。かっこうは窓ガラスに何度もぶつかり、ゴーシュが窓をけり破ると外へ飛び去る。狸の子は、二番目の糸が遅れて鳴ることを言い当てる。野ねずみの母親の話から、動物たちが小屋の床下でセロの音を聞いて病気を治していたと分かる。ゴーシュは子ねずみをセロの孔に入れて弾き、元気になった親子にパンを分けてやる。
それから六日目の晩、金星音楽団は町の公会堂で第六交響曲を首尾よく演奏する。アンコールを求められると、楽長はゴーシュを舞台へ出す。ゴーシュはばかにされたと思い、猫の晩と同じ曲を弾く。聴衆は静まり返って聞き入る。
楽屋に戻ると、楽長はゴーシュの上達をほめる。仲間もみんな「よかったぜ」と声をかける。その晩、家に帰ったゴーシュは窓をあけ、かっこうが飛んで行った遠くの空をながめる。そして「ああかっこう。あのときはすまなかったなあ。おれは怒ったんじゃなかったんだ。」と言う。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日