つきよとめがね
月夜と眼鏡
- 読了時間
- 約8分
- 文字数
- 3,652字
- 読みやすさ
- やさしい
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「赤い鳥」赤い鳥社、1922(大正11)年7月
三行でいうと
- 町も野も緑の葉に包まれる月のいい晩、町はずれに一人で住むおばあさんが窓の下で針仕事をしている。
- 目がかすんで針のめどに糸が通らずにいると、黒い眼鏡をかけた眼鏡売りの男が窓の下に来る。
- 眼鏡を買って休もうとしたころ、指を傷つけた十二、三の美しい少女が入り口の戸をたたく。
登場人物
- おばあさん
- 静かな町のはずれに一人で住み、目がかすむのに困りながら夜に針仕事をしている。
- 眼鏡売り
- 黒い眼鏡をかけたひげのある男で、月のいい晩にこの町へはじめて売りに来る。
- 少女
- 町の香水製造場に雇われていると話す髪の長い娘で、おばあさんの家の前をたびたび通っていた。
読みどころ
月の光に満ちた静かな晩に、一人暮らしのおばあさんの家へ二人の客が来る。どちらの客も、来るはずのない時刻に戸をたたく。何が起きても騒がず、やさしく迎えるおばあさんの姿が話の中心にある。
月夜の書き方に注目したい。月の光は、なまあたたかな水に町が浸されたように描かれる。目ざまし時計の音や遠くの汽車のとどろきが、夜の静けさをかえって深くしている。眼鏡売りが言う「これなら、なんでもよく見えること請け合いです。」という一言も、読み終えてから思い返したくなる。
小川未明は、子ども向けの童話を数多く書いた作家である。この作品では不思議な出来事が起きるが、怖さはなく、穏やかな夜の空気が最後まで続く。短いので、寝る前に読むのにも向く。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
おばあさんは少女の傷口を見てやろうとするが、目がかすんでどこから血が出ているのか分からない。たなの上の目ざまし時計のそばから眼鏡を取ってかけ、娘の顔をよく見ようとする。すると、そこにいたのは娘ではなく、きれいな一つのこちょうだった。おばあさんは、穏やかな月夜にはこちょうが人間に化けて、遅くまで起きている家をたずねることがあるという話を思い出す。こちょうは足を傷めていた。
おばあさんは「いい子だから、こちらへおいで。」とやさしく言い、先に立って裏の花園へまわる。少女は黙って後についてくる。花園には花が盛りと咲き、垣根には白い野ばらが雪のように固まって咲いている。
ふいに立ち止まって振り向くと、少女は足音もなく姿を消していた。おばあさんは「みんなお休み、どれ私も寝よう。」と言って、家の中へ入ってゆく。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日