ぼっちゃん
坊っちゃん
- 読了時間
- 約2時間57分
- 文字数
- 88,272字
- 読みやすさ
- ふつう
- 表記
- 新字新仮名
初出: 「ホトトギス」1906(明治39)年4月
三行でいうと
- 親譲りの無鉄砲で損ばかりしてきたおれは、物理学校を出て四国の中学校の数学教師になる。
- 生徒のいたずらに手を焼くうち、教頭の赤シャツと主任の山嵐のどちらを信じるかで迷い始める。
- うらなりの縁談と転任の裏に赤シャツの策略があると知り、おれは山嵐と手を組んで動き出す。
登場人物
- おれ
- 語り手。親譲りの無鉄砲な江戸っ子で、四国の中学校へ数学の教師として赴任する。
- 清
- おれの家に十年来奉公する下女で、家族に疎まれるおれをただ一人可愛がる。
- 山嵐
- 同じ数学の教師の堀田。会津の出で、生徒に一番人望がある。
- 赤シャツ
- 年中赤いシャツを着ている教頭の文学士で、女のような優しい声を出す。
- うらなり
- 英語の教師の古賀。蒼くふくれた顔の大人しい人で、遠山のお嬢さんと結婚の約束があった。
- 野だ
- 画学の教師の吉川。赤シャツのうちへ朝夕出入りし、どこへでも随行する。
- 狸
- 校長。もったいぶった話しぶりで、要領を得ない事ばかり並べる。
- マドンナ
- 遠山のお嬢さん。このあたりで一番の美人だと下宿のお婆さんが話す。
読みどころ
この作品の中心にあるのは、正直で真っ直ぐな人間が世の中でどう扱われるかだ。おれは嘘と陰口を何より嫌い、思ったことをすぐ口と手に出す。清はそんなおれを「あなたは真っ直でよいご気性だ」と賞める。けれども赴任先の学校では、愛想のよい人ほど裏がある。誰が善人で誰が悪人なのか、おれは何度も見立てを変えながら手探りで進んでいく。
読むときは、まず語りの勢いに身をまかせるとよい。おれは教師たちに狸や赤シャツ、うらなりといった渾名をつけ、腹の立つことを片端からまくし立てる。生徒や下宿のお婆さんが話す土地の言葉との掛け合いも楽しい。山嵐とのあいだを隔てる一銭五厘の氷水代は、小さな出来事がこじれていく様子をよく見せる。遠く離れた清を思い出す場面が、笑いの多い物語に静かな影を落としている。
夏目漱石の初期の作品で、1906年に雑誌『ホトトギス』に発表された。一人称の歯切れのよい文体と勧善懲悪めいた筋立てで、漱石の作品の中でも特に広く読まれてきた。古い言葉はあるが会話が多く、長さのわりに読み進めやすい。
結末まで知りたい人へ
結末を表示する(ネタバレを含みます)
祝勝会の日、赤シャツの弟に誘われて余興を見ていたおれと山嵐は、中学と師範の生徒の喧嘩を止めに入る。石を投げられ棒で打たれるうちに乱闘に巻き込まれ、巡査に捕まったのは二人だけだった。翌朝の新聞は、二人が生徒を煽動して暴れたと書き立てる。山嵐は、喧嘩に誘い出したのも記事も赤シャツの策だと見る。やがて山嵐だけが校長に辞表を求められ、おれが談判しても話は進まない。
山嵐は辞表を出して町を去ったふりをし、温泉の町の枡屋の二階から角屋を見張る。おれも加わり、八日目の夜に赤シャツと野だが角屋へ入るのを見届ける。二人は朝の五時に出てきたところを杉並木で捕まる。おれは袂の玉子を野だの顔に投げつけ、山嵐は赤シャツを殴りつける。港屋で待っても巡査は来ず、おれは辞表を郵便で出して、その夜山嵐と船で町を離れる。
東京に着いたおれは、下宿へも寄らずに清のもとへ駆け込む。清は涙を落として喜び、おれは東京で清と家を持つと告げる。その後おれは街鉄の技手になるが、清は肺炎で死んでしまう。清の願いどおり、その墓は小日向の養源寺にある。
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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日