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さくらのもりのまんかいのした

桜の森の満開の下

坂口安吾

読了時間
約34分
文字数
16,609字
読みやすさ
ふつう
表記
新字新仮名
読む速さ

初出: 「肉体 第一巻第一号」暁社、1947(昭和22)年6月15日

三行でいうと

  1. 鈴鹿峠に、旅人の着物をはぎ、気に入った女は女房にしてしまう山賊が住んでいた。
  2. 何ものも恐れない山賊だが、満開の桜の森の下を通るときだけは、恐ろしくて気が変になりそうだった。
  3. ある春、山賊は街道で旅人を殺し、その連れの美しい女を八人目の女房としてさらってくる。

登場人物

山賊
鈴鹿峠の山に住む。乱暴で恐れを知らないが、満開の桜の下だけは気味悪く思っている。
女
山賊にさらわれた美しい女。わがままで残酷な望みを次々に口にする。
足の不自由な女
山賊の女房の一人。美しい女に命じられ、女中として仕える。

読みどころ

昔話のような語り口で始まり、読み進めるほど不気味さが増していく幻想小説である。作者は満開の桜を、おそろしいものとして描いている。

女は山賊を思いのままに動かし、山賊はそれを喜んで受け入れる。美しいものに人が支配されていく関係を、作者は善悪の判断をはさまずに書いている。

戦争が終わってまもない時期に発表された、坂口安吾の代表作の一つ。終わり近くの数ページは、言葉を切り詰めた静かな文章で書かれている。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

女は山賊に命じて、ほかの女房たちを斬らせる。いちばん醜い足の不自由な女だけは、女中として残させた。やがて女は都で暮らすことを望み、山賊は女を連れて都へ移る。

都で女が楽しんだのは、山賊に人を殺させ、その首を持ち帰らせて遊ぶことだった。女は首を並べて恋や争いの芝居をさせ、きりなく新しい首を欲しがる。都の暮らしに飽きた山賊が山へ帰ると決めると、女も一緒に帰ると言う。

山賊は女を背負い、満開の桜の森へ入る。そのとき背中の女は鬼に変わり、山賊の首を絞める。山賊は夢中で鬼を絞め殺すが、気がつくと死んでいたのは女だった。桜の下で泣いた山賊が、女の顔の花びらを払おうとすると、女の姿は消えて花びらだけが残る。花びらをかき分けようとした山賊の手も体も消え、あとには花びらと冷たい虚空だけが広がっていた。

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公開: 2026年10月26日 更新: 2026年10月26日