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たけくらべ

たけくらべ

樋口一葉

読了時間
約58分
文字数
28,618字
読みやすさ
歯ごたえあり
表記
新字旧仮名
読む速さ

初出: 「文学界」文学界雑誌社、1895(明治28)年1~3、8、11、12月、1896(明治29)年1月

三行でいうと

  1. 吉原の廓に近い大音寺前の町で、子どもたちは横町組と表町組に分かれて張り合っている。
  2. 夏祭りの夜、横町組の長吉が筆屋に押し入り、三五郎を殴って美登利の額に泥草履を投げつける。
  3. 美登利は信如が裏で指図したと思い込む。口を利かなくなった二人は、雨の日に大黒屋の門で向き合う。

登場人物

美登利
大黒屋の寮に住む十四歳の少女で、生国は紀州。姉は廓の大黒屋にいる大巻である。
信如
龍華寺の息子で、歳は十五。いずれ僧になる身で、おとなしく学校の成績がよい。
正太郎
表町の田中屋の息子で、正太と呼ばれる。祖母と二人で暮らし、日がけの集金を手伝う。
長吉
横町組の大将で、歳は十六。乱暴者で、表町の正太を目の敵にしている。
三五郎
横町に住むおどけ者で、六人きょうだいの長男。家は田中屋から金を借りている。
筆やの女房
子どもたちが集まって遊ぶ筆屋の女主人である。

読みどころ

廓のそばの町で、子どもたちが大人になる手前のわずかな季節を過ごす。勝ち気な美登利と寺の息子の信如は、互いを気にかけながら言葉を交わせない。祭りの喧嘩や筆屋での遊びの陰で、それぞれの行く末は生まれた家によって決まりつつある。誰も口には出さないまま、その日が近づいてくる。

文章は句点の少ない文語で、一つの文が長く続く。初めは読みにくいが、声に出して読むと、子どもたちの台詞が地の文に溶け込んでいるのが分かる。正太が亡くなった母のことや祖母のことを美登利に打ち明ける場面では、金持ちの息子の別の顔が見える。雨の日、大黒屋の門で美登利と信如が向き合う場面は、とくに丁寧に読みたい。格子を挟んだ二人の距離が、紅い友仙の切れ一枚で描かれている。

樋口一葉は明治の女性作家で、若くして亡くなる少し前に本作を書いた。本作は雑誌『文学界』に明治28年から29年にかけて連載され、森鷗外らに高く評価された。

結末まで知りたい人へ

結末を表示する(ネタバレを含みます)

雨の日、信如は姉に届ける長胴着を抱えて大黒屋の寮の前を通り、下駄の鼻緒を切ってしまう。障子越しに見つけた美登利は友仙ちりめんの切れを持って門まで出るが、相手が信如だと分かって声をかけられない。母親に呼ばれた美登利は、格子の間から切れを黙って投げ出し、家に戻る。信如は足もとに落ちた紅い切れを見つめるが、拾い上げない。通りかかった長吉が自分の下駄を貸し、切れは門の外に残される。

三の酉の日、美登利は姉の部屋で大きな島田に結ってもらい、廓から出てくる。正太が似合うと褒めても、美登利は「私は厭やでしようが無い」と沈んだままだ。寮に帰ると美登利は伏せて泣き、わけを話さない。「帰つておくれ正太さん」と正太を追い返す。そのあと正太は筆屋で、信如が近く僧の学校に入ると三五郎から聞かされる。

その日から美登利は町で遊ばなくなり、正太とも親しまなくなる。母親は「これは中休み」と言うばかりである。ある霜の朝、誰かが格子門の外から水仙の作り花を差し入れていく。誰の仕業か分からないまま、美登利は懐かしい思いでそれを一輪ざしに挿す。あとで伝わった話では、その翌日が、信如が学林に入る日であった。

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公開: 2026年10月27日 更新: 2026年10月28日